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夢見る竜とGW編26コイゴコロ 筆の人の場合

あらすじ:宝貝ミケちゃんから吐き出されたのは、竹林の掛け軸の中で遭遇した筆の人だったが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編26

 ミケちゃんに吐き出された筆の人が、立ち上がろうとする。
 あまり丁寧な出され方じゃなかったのか、悪酔いしたように足元がおぼつかない。
 畝だらけになった布団でバランスを崩しかけたので、とっさに私は片手に卵を抱えたまま、相手の腕を摑んで支えた。
「ああ、どうも……」
 言いかけた筆の人が、こちらに振り返るなり、力一杯腕を払った。
「うひゃっ!?」
 払われた力で私の方がバランスを崩し、半回転して布団の上にひっくり返る。
 背中からだったので、とりあえず抱えた卵はセーフ。
「危ないじゃないですかっ」
「じゃあ、触らないでくれる?」
 筆の人は硬い表情のまま、私が摑んだ箇所を、泥でもついたみたいに、神経質に払っている。
 な、何だろう。極度の潔癖症かな……?
「で、この男が結界とどう関係している」
 ひっくり返って膝までめくれた私の浴衣の裾を直しながら、町田さんが静かに筆の人を一瞥する。別にさくら君みたいに視線で威圧しているわけでもないのに、町田さんを見る筆の人のこめかみには、うっすらと汗が浮いている。この人、町田さんの体にいる神様が見えてるのかなー。竹林の掛け軸では、壺のミケちゃんが見えてたみたいだし。
「それは分かんないけどお、こないだこころちゃんを囮にして結界の力がどこから来るか調べたらあ、三つも質の違う陰の気とつながってて、それを倒しちゃう人も三人いてえ、その内の一人がこころちゃんの後をつけてきて、あたしの家を嗅ぎまわってたから、捕まえたんだけどお」
「今、さらりとコワイこと言いましたよね」
 やっぱりあの竹林の掛け軸、全然近道じゃなかったんだ……。
「だってえ、一番元気な子にくっつきかけた符の術式は、あたしがフォローに行ったから完全に解けたけどお、残りの二人のはまだつながったままだしい」
「はい?」
 今、更にさらりと怖いこと言いませんでした?
「符の力が子供の体に転移しちゃってるのよお」
「じゃあ、さっきから綾井さんが言ってる結界がつながってるややこしいトコって、澪海くんと葉守くんのことですかっ?」
 ここに来て、すっかり元気になったとばかり思ってたのに。
「そお。だから符を構成してる陰の気に詳しそうな人がいればいいかなーって」
「なに勝手なこと言ってんの?」
 町田さんからなかなか注意を逸らせずに、苛立たしそうに髪をかき上げながら、筆の人は吐き捨てるように言った。
「人のこと都合の良い道具か何かみたいに」
「えぇ?ちょっと手伝ってくれてもいいじゃなあい」
「甘えて駄々こねれば自分の意見が通るとでも思ってる?これだから女って……」
 筆の人が綾井さんを見やる。
「……女はひどいよね。優しくすればつけ上がって、冷たくすれば逆上する。自分を理解しろと言うくせに、こっちのことにはまるで気遣いのひとつも見せやしない。プレゼントは高価で当たり前。サプライズにブランドの付加価値は当たり前。結局金と見栄さえ満たされれば、隣にいるのが誰だろうと構いやしない。遊んで飽きたら人の金目のものだろうと売り払ってほかの男に走るような奴らだよ」
 それはまたよりにもよってひどい人達とばっかり付き合いましたねー。
「もう二度と女なんか信じない」
 つまり、この筆の人、過去に複数の女性からひどい目に合って、女性不信になっちゃったわけか。
 力なく目を伏せる筆の人が呟いた。
「でも……今ようやく分かったんだ」
 ん?
「今までそんな醜い奴らに虐げられてきたのも、あの地獄のような日々を這いずり回ってきたのも、全てあなたという美に巡り会うための、ただの書き割に過ぎなかったんだって……!!」
 ……あー、結局そうなっちゃうわけなのね。書き割って、舞台背景とかの絵のあの書き割のことかな?
 筆の人は十年ぐらい前にこっぴどい目にあったときに自棄買いしたとかいう万年筆コレクションを、当たり前のように綾井さんにプレゼントしていく。
 クロネのエベレスト(エベレスト山頂の岩を埋め込んである)十八万円、パイロットの蒔絵双鶴(職人さんが六十日かけて漆や金粉を蒔いて全面を木炭で研いだ加賀蒔絵)二十万円、クロネのエイブラハム・リンカーン(リンカーン大統領の毛髪から抽出したDNAをアメジストに封入してる)二十二万円、ウォーターマンのシニエ・ブシュロン(フランスの高級宝石商ブシュロンとの共同制作、世界3741本限定)二十五万円、スティピュラのローラス(古代ローマ時代の競馬を題材にアセテート製のペン軸に純銀の彫刻、世界398本限定)三十五万円、クロネのシェークスピア(生家の桑の木を封入、世界388本限定)三十六万円。計百五十六万円の世界限定品は、十年前の値段だから今はもっと高いはず。それから、プライスレスな筆の人の笑顔。
 散々カモられておきながら、全く学習してないな、この人。ふみ兄みたい……。
 とりあえず、協力はしてもらえそうだから、私は綾井さんが散らかした符の破片でも片付けようかなーとか、子猫ミケちゃんのかわいい背中を撫でながら、そんなことをぼんやりと考えていた。

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夢見る竜とGW編25ハリセンでしばき倒すっていったら……

あらすじ:ひなびた温泉宿でゆったり温泉に浸かるものの兄がいるかもしれない事実にぐったりする星庵心だが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編25

 私も部屋に戻ると、町田さんが正座をしてお茶を淹れていた。
 宿泊することになった部屋は、飛司少年たちや、さくら君、一応剣の人用の男子部屋と、町田さん、綾井さん、私用の女子部屋のふたつで、葉守少年が戻った男子部屋の隣が、女子部屋になっている。
「お帰り。湯加減どうだった」
「はあ、まあ、良かったですけど……何ですか、これ?」
 町田さんの周囲には破れた大量の紙が散乱している。
「符だ。卵に貼りついていた」
 多分自分用に淹れたお茶を、私に差し出す町田さん。
「じゃあ、奥の部屋から聞こえる、何かをしばき倒すみたいな音は……?」

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夢見る竜とGW編24ひなびた温泉宿っていったら……

あらすじ:竜の卵?を救出し、ひなびた温泉宿に辿り着いた星庵心たちだったが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編24

「うあー、生き返るー……」
 小さな露天風呂には自分以外誰も居らず、やや丸みを帯び始めた空の半月だけが、周囲の空気を青白く染めて眩しいぐらいだった。
 お湯に浸かると体の冷えが、疲れと一緒に溶けていく。
 自分の体も、月の光でぼんやりと、輪郭は曖昧で、湯気と一緒にとろけていく。
はあー、このまま寝てしまいそうなぐらい気持ちいいや。

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夢見る竜とGW編23蛍光の人影

あらすじ:根の追跡を逃れた星庵心は綾井につれられ、さくらとともに鍾乳洞の岩場を登りだしたが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編23

 足取り軽やかな綾井さんの背を追いながら、岩場を登っていく。
 さくら君が持つ懐中電灯の光はさほど遠くまで照らすタイプでもないのに、先を進む綾井さんの姿は、闇の中でも奇妙にくっきりと浮かび上がって見える。
 まるでそこだけ空気が輝いているみたいだ。なんか歩きやすそうでいいなあ。
 私は符だらけになった卵を抱えてひたすら岩の坂道やら隙間やらをよじ登り、時々さくら君に荷物よろしく引っぱり上げられる。

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夢見る竜とGW編22蒼い水面

あらすじ:根から零れた卵をつかまえたのも束の間、水脈へ落ちる心たち。根に追いかけられたが綾井の破壊的な料理の腕でどうにか逃れるが……?
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私の日常 夢見る竜とGW編22

 蒼い。蒼い水面から天を貫く岩の柱がいくつも聳えている。
 音は無い。とても静かな場所。
 どこまで行っても蒼い水と、岩の柱しかない。
 岩のひとつに人影が現れた。柱から突き出したわずかな足場から、水面を見下ろしている。
 澄んだ水底には、全く違う景色が映っていた。底にある景色そのものだろうか。
 人の住む街。雑多な人の気配の渦巻く都市、町、村。
 水面が揺れるたび、景色は別の場所へ移り変わっていく。
 人影はずっとそれを見下ろしている。朝も昼も夜も、水底の景色に花が咲き、緑が繁り、果実を残して枯れていくのを何度も繰り返していく、その景色をずっと見ている。
 どれぐらいそうしていたのか、人影が腕を差し出した。

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夢見る竜とGW編21仙女の奥儀!?

あらすじ:竜をとらえる根の暴れっぷりに困っていたところ、兄からの迷惑なやかまし電話を逆に利用してその動きを抑えた星庵心だったが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編21

 小さな湖のふちを走るその先に、何かまるい塊が落ちていく。卵の形。
「って、全然間に合わないんですけどーっ!」
 綾井さんは簡単に拾えって言うけど、私の脚力で間に合う距離じゃない~!
 必死で走る私の背後から風が来た。卵めがけて群れ飛ぶ白い影。
 平たい白いもの。御札だ。卵に貼り付いて、見る間にひとまわり大きな塊をつくる。
 それが水面ではなく、湖のふちに落ちた。ぽん、とゴムまりみたいに跳ねる。よ、良かった~。
 つかまえようと跳ねる先に目星をつけて走っていくと、足元が揺れた。

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夢見る竜とGW編20ケータイでおれの歌を聴けえ!?

あらすじ:符の力に倒れる三少年を助けに行くさくら、綾井、剣の人。だが小さな根を断った事で大きな根の塊が星庵心へと倒れてきて……。
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私の日常 夢見る竜とGW編20

 青白い光が波立つ。
 大きな根の塊が湖の縁を軋ませながら倒れてくる、まさにその時。
 ケータイが鳴った。
『んみゃーあーあ~ん』
 途方もなく脱力する着メロは、ミケちゃんの鳴き声そのものだった。
 ……で、なぜ今ケータイが?

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夢見る竜とGW編19倒れる時には掛け声を

あらすじ:竜を救うために変身して三つの結界の符に向かった飛司達だったが、符の操る根に捕まってしまい……。
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私の日常 夢見る竜とGW編19

 根の塊に引きずり込まれた飛司少年の悲鳴が響き渡る。
「……て…!出して!!ここから出して……ッ!!」
 かすれた叫びとともに突風が吹きつける。飛司少年を捕らえていた根が、バラバラと千切れて降ってくる。太い根はまるで剃刀で切ったような断面をしていた。
 飛司少年の姿はもう半分ぐらい見えているのに、風はおさまるどころか、益々ひどくなっていく。
 根の切れ端や鍾乳石の欠片と水しぶきが逆巻いて、肌のあちこちを叩いた。
 吹き荒れる風と飛司少年の泣き叫ぶ声が洞窟に反響して耳がおかしくなってくる。完全にパニック状態だ。

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夢見る竜とGW編18コイゴコロ 剣の人の場合

あらすじ:地下湖に封じられた竜は三つの符が施された根に絡まれ、姿が見えない。飛司少年たちは変身して助けようと張り切るが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編18

 三少年は変身すると、それぞれの場所へ駆けていく。
 澪海少年は大きな湖へ飛び込み、飛司少年は頭上の塊へ飛び、葉守少年は湖のふちを伝って壁に辿り着くと、岩に手のひらを押しあてた。見る間に岩が透明になると、まるでゼリーか寒天みたいに体が吸い込まれていく。
「こりゃあ、たいしたもんだ……」
 器用な三少年を呆然と見送る剣の人。
「自分も腕が剣になるじゃないですか」

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夢見る竜とGW編17変身のコトバ

あらすじ:綾井仙女の美しさに問答無用で仲間になった剣の人の案内で、星庵心たちは竜のとらわれた洞窟に辿り着くが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編17

 辿り着いたのは大きな湖だった。
 湖の壁面から太いいびつな根が、何かを覆うように塊をつくり、それは半分、湖水へ浸かっている。
 水は絶えず溢れて、階段状に広がった、周囲の小さな湖に流れ落ちていく。段々になっているのは、水が石灰を含んで根に付着していくからだろう。鍾乳石の柱も何本も出来ている。
 端まで行きついた流れは滝となって、更に深い水脈へと、遠く底の方へ、水の音は消えていく。
 こ……こわい……。山に潜ってるのに、高い場所にいる……。

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夢見る竜とGW編16地下水の秘密

あらすじ:綾井仙女の美貌に問答無用で仲間入りを果たした剣の人を案内に、山の地下水脈を目指す星庵心たちだったが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編16

 洞は根の隙間が風雨の浸食で崩れた横穴をしばらく歩くと、つきあたりにある縦穴につながっていた。こっちは侵食というより、亀裂でできた溝で、下へ下へと続いていく。
 絡まり這う杉の根が、階段代わりになって、飛司少年と手をつないだままの私でも降りれるぐらいだ。
 懐中電灯で照らされた岩伝いに、大きな電灯とケーブルがある。本当は灯りをつけられるけど、そうすると工場の方でバレるから、使えないのだそうだ。剣の人はそういうものの、飛司少年の様子を見ると、いざとなったら電気をつけるしかないだろう。
「だけど、こんな具合の悪くなるとこの水を汲み上げて、何を作ってるんですか?」

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夢見る竜とGW編15剣の人と再会

あらすじ:竜探しに陰気な山登りをする星庵心たちの前に掛け軸で会った男が現れたが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編15

 藪をかき分けて現れたのは、無精髭を生やし、黒いスーツを着崩した男の人だった。
 左腕を剣に変えることが出来る、この器用な人に、帰宅途中に掛け軸の空間で会うなり不審人物扱いをされたっけ。今は腕を剣にはしてないけど。
「これはこれは石鏡の坊っちゃん。今日はオトモダチとピクニックで?」
 剣の人と葉守少年はどうやら知り合いらしい。
「こいつ、だれだ?」と飛司少年。
「誘拐未遂犯の一人」
 さらりと仰る葉守少年。そちらの方がすっごい不審者なんですけど。

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夢見る竜とGW編14ケンアク登山?

あらすじ:竜探しをするため、手入れのされていない林道までやってきた星庵心だが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編14

 林道を歩いてどれぐらい経っただろうか。延々と続く暗い山道の空気は人の気持ちを沈ませていくのか、誰の話し声も聞こえない。あれだけ元気に出発した飛司少年も、今はただ湿った地面を踏みしめて進んでいくだけだ。
 動物や鳥の鳴き声が聞こえない。虫の姿が見えない。風も吹かない。一番奇妙なのはこれだけ周りがスギとヒノキだらけなのに、くしゃみのひとつも出ないということか。生き物の活動がことごとく希薄だ。
「まだ歩くのかよ~」
 不機嫌そうに飛司少年がぼやく。
「…リーダー様のお前が言い出したことだぞ。人の都合も聞かずにな」

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夢見る竜とGW編13探険の前に……

あらすじ:竜探しをするために仙女の綾井宅へ異世界剣士のさくらをつれて準備を整える星庵心だが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編13

 お日さまが出る前から高速道路を走り続けた大型バスは、昼近くになってようやく一般道に下りた。その頃には辺りはすっかり山に囲まれ、人里もろくに見ないまま、林道脇の小さな空き地に停車する。
「本当にこんな所なんですか?……っとと」
 ステップと地面の間が意外に高くてつまづきそうになった。
 山の中なのに、何だか空気が重くよどんでいる。人手不足なのか、植林された木々はほとんど間伐も手入れもされずに、鬱々とした暗がりを葉の下に広げていた。
「眼鏡ちゃんはそう言ってたものお」

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夢見る竜とGW編12一回休みスパイラル

あらすじ:竜探しをするべく、異世界剣士さくらと綾井の家に向かう星庵心だが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編12

 綾井さん宅へ辿り着いたのは、家を出て数時間後のことだった。
 因みに普段なら一時間以内で着ける距離だ。
 上がりかまちをよじ登ると、そのまま玄関ホールにべったりと寝そべる。ああ、床が冷たくて気持ちいいー……。
「さあっ、さくら君、切符を買ってみよう!」
 めくるめく人生ゲームのドツボスパイラルは、こんな一言で始まった。
「それは定期券販売専用なの~」とか「ぺけ印の改札は向こうの人が通る印でした~」とか、はじめての旅行に奮闘するさくら君のほほえましい光景はこの辺までだった。

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夢見る竜とGW編11お出かけ前の

あらすじ:掛け軸の世界で三人の男に言いがかりをつけられつつ、どうにか帰宅したものの、旅行計画に大爆走する兄に振り回される星庵心だが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編11

 朝まだ早い時間に玄関にたったふみ兄は、廊下の奥からやってくるミケちゃんに諸手を広げた。
「おおう、ミケザイル~!勇者ふみふみがこれから遠い異郷の地へまさにエグザイル!(放浪だか自己的追放だとか言いたいらしい)すると知って、見送りにきたか~!!」
「みゃああああーん」
 ロシアンブルーの子猫ミケちゃんは、名残り惜しむかのように駆けてくると、屈んだふみ兄の顔へ飛びついた。

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夢見る竜とGW編10ふみ兄観察

あらすじ:掛け軸の中の世界で三人の男に言いがかりをつけられたが、銀豹宝貝ミケちゃんの活躍でどうにか家に帰れた星庵心だが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編10

 リビングで大量の服を散らかしながら、ふみ兄がショルダーバッグと格闘している。
「ただいま。遅くなってごめんです。何してるの?」
「見て分からないのっ?こんな家出てってやるのヨ!」
 何故オネエ言葉ですか、兄。ハンカチ噛んで小指立てないで下さい、兄。
 そういえば、ふみ兄って昔はよく家出してたなあ。

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夢見る竜とGW編9ぐったり帰還

あらすじ:仙女の綾井に唆されてうっかり掛け軸の近道で帰宅する星庵心は、三人の男からあやしいやつ呼ばわりされてしまうが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編9

 大量の水が溢れた後の、三人の行動は素早かった。
 焔の人は音もなく、筆の人は空中に描いた四角い枠をくぐって、剣の人は左腕の刃で空間を切り裂いて身を躍らせ、それぞれ姿を消していった。
 ……逃げ足早っ!!
 大量の水とイカを吐き出した銀豹のミケちゃんは、しっぽで私を抱えると、高々とジャンプして、筆の人が書いたへどろの竹にしがみついた。
 その勢いで大きくしなった竹を踏み台にして、いっきに跳躍する。
 跳ね泳ぐイカを足場にして、軽やかに波を越え、次の竹林のしげみに到着すると、また竹の一本によじ登り、イカ津波をやり過ごす。
 うう、しっぽに巻かれたお腹がちょっと苦しい……。
 

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夢見る竜とGW編8正直に言ってるのに

あらすじ:仙女の綾井にすすめられて掛け軸の近道を歩く星庵心。唐突に三体の正体不明のものと三人の男に囲まれてしまうが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編8

「てめえら何者だ」
「まずそっちから名乗ってよ」
「いやァ、そいつはちょいとごカンベンを」
 長身の黒い影を倒した二十代半ばぐらいの焔の人が、低くドスのきいた声で尋ねれば、それより少し若いへどろを倒した筆の人が、女性受けしそうな顔に辛辣な微笑を浮かべて切り返し、立方体を倒した三十代後半ぐらいの剣の人が、飄々と混ぜ返す。
 三つ巴で対峙した三人の男の人は、構えを解くこともなく、睨み合って動かない。
 あの、私は関係ないので帰ってもよろしいでしょうか……。

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夢見る竜とGW編7三×二すくみ?

あらすじ:綾井の提案した竜探しに同行することにした星庵心は、葉守少年の反感を買いつつもごはん当番担当になったが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編7

 掛け軸は、飛司少年が眠っている部屋の隣りにあった。床の間に掛けられたその画は、微かに霧のかかった竹林だった。
 綾井さんに触れていいか確認してから、手をのばすと、そのまま道が続いていくように、何の抵抗もなく入っていく。
 掛け軸をまたいで、抱えていた靴を履いていると、嬉しそうにしっぽを立てた子猫のミケちゃんが、淡い和紙の色味に染まった、やわらかな空気の中を先に行き、少し歩いては振り返る。はいはい、今ついてゆきます。
「出発は三日の朝だからあ、明日の夜には来てえ」
「そして夕飯も作れと」

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夢見る竜とGW編6晩御飯の味と仙女の誘惑

あらすじ:異世界の環境に馴染めないさくらを気遣って、ついうっかり綾井の企画した竜探しに参加することにした星庵心だが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編6

 綾井さんが「こころちゃんがごはん当番として探検に参加することになりましたあ」と言った途端、眉をつり上げたスーツ少年の、妙に痛い視線を受けながら、リビングのテーブルに夕飯のお皿を並べていく。
 キャベツの状態がアレな感じだったので、今日のメニューはミンチとキャベツを重ねたミルフィーユ・キャベツ…要するに平らなロールキャベツにしてみた。
「お前、なにおこってんだよ、葉守~」

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夢見る竜とGW編5さくら君のお話

あらすじ:クールな少年の車で仙女の綾井の家に辿り着いた星庵心はキッチンでキャベツの成れの果てを見るが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編5

「竜探し?」
 綾井さんの手にかかり、無残な状態になったキャベツはどういうわけか、固い芯の部分だけが茹でたように柔らかく弾けていた。葉の部分は弾けた勢いで外側へめくれて撒き散らされてはいるものの、ほとんど無傷のままだ。
「あの元気な男の子がねえ、自然界に関わるものを探してるって言うから、知り合いの竜の話をしたら、会いたいって」
 元気な子。飛司少年の方か。名前覚えてあげようよー。
 それにしてもこのキャベツ、本当に料理をしようとしたのかな……。根本的に何かが激しく間違ってる気がしなくもないけど。
「で、仙界に問い合わせたら随分前に人間界に下りてはいるんだけど、消息不明になってて」

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夢見る竜とGW編4悪酔いの光景

あらすじ:クールなビジネス少年の車で、ナゾのパッケージモニター?をさせられつつ、何だか見覚えのある場所へと連れて行かれそうな心だが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編4

 少年が誰かにかけていたケータイを切った直後、運転手さんが急ハンドルを切った。直進車線を走っていた車が、ドリフトしながら交差点を左折してゆく。
 後方でハンドルを切り損ねた車が数台、信号の切り替わって進入してきた他の車に囲まれて、避難のクラクション攻撃を受けている。
 もしかしてあれ、さっきショッピングモールにいた誘拐未遂犯の仲間だろうか。
 うう、本格的に気持ちが悪くなってきた……。

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夢見る竜とGW編3凍えるモニター

あらすじ:ショッピングモールで出会った見知らぬ少年の車に乗る羽目になった星庵心だが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編3

 石鏡葉守。いじかはもり。どこかで聞いたような覚えがある。どこでだったかな。
 少年は興味のなさそうな手つきで履歴書の入ったクリアファイルを差し出した。ポケットから多機能が売りの最新ケータイを取り出している。スーツの袖からちらりと特注らしい高価そうな時計がのぞいた。何だかオフィスで、忙しそうな上司に自信満々の企画書をつき返されてる気分。
「それで、つまり何が言いたいんだ」
 電話の相手は近しい間柄なんだろうか。言葉は身も蓋もないのに、少年の声が少しだけ感情を帯びて、私に対するより熱を感じる。 
「シートベルト」
「あ、はい」

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夢見る竜とGW編2背広の声、少年の声

あらすじ:ショッピングモールで絵画展を見た帰り、星庵心は背広の取り巻きに過剰に接待されていた見知らぬ少年に、名前を呼ばれたが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編2

 見知らぬ少年に名を呼ばれて、私は目を瞬かせた。
 大人びた表情で年の頃は分からないが、多分中学生にはなっていないはずだ。
 手入れの行き届いた髪型に、子供じみた雰囲気の微塵も感じられない、細身のスーツ。
 光沢を放つ靴はどう見ても海外ブランドの本革製。
 そのどれもが馴染んで、御曹司、という言葉がぴたりと当て嵌まる怜悧な姿を際立たせている。片手にまとめた書類の大きさだけが、ひどく目立っていた。
「時間もありませんし、行きましょうか」

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夢見る竜とゴールデンウィーク編1厄日の出会い

本日よりGW編です。やっとテンプレートが変更できます……。でも話の季節はまだ五月。コツコツ書いてゆきまする~。
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私の日常 夢見る竜とGW編1

 張り紙が一枚張られた、小さな店の扉をしばらく眺めてから、私はその場を後にした。
 突然の時間の空白に、少し戸惑う。
 ぼんやりと奇妙な開放感を抱えて、あてもなく歩いていると、ふもとの街では一番大きなショッピングモールが目に入ってくる。セールの内容や、催し物の案内が書かれた垂れ幕が鮮やかにひるがえる。
 絵画展をやっているのか。その画家の名前に覚えはなかったけれど、私の足はすでにそちらへ向かっていた。

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異世界剣士とさくら編51契約の花は降り(下)

あらすじ:龍種の力を暴走させたさくらの元へようやく辿り着いた星庵心だが賢者は破壊されようとしていた……。
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私の日常 異世界剣士とさくら編51(下)

 ひび割れた賢者さんの鞘から液体が零れて、混沌の泥の上に撒き散らされていく。綾井さんにもらった薬。さくら君に飲ませるはずだったもの。
 混沌の紐はなおも賢者さんを軋ませていく。賢者さんを壊してしまったら、どうなるか分かってるだろうに。
「お師匠さんが残してくれた形見じゃないの?」
 帰りたがったり、帰りたくなくなったり、やることが目茶苦茶だ。
「契約する気など無かった。賢者は師の記憶盤なのに……」
 ……ああ、結局さくら君が気にしてたのはそこなんだ。
「こんなプライドばっかり高い、甘ったれ記憶盤のいうことなんかどうでもいいって」

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異世界剣士とさくら編50契約の花は降り(上)

あらすじ:歪みができた状況を再現するかえでの術によって賢者と契約するかと思われたさくらは暴走し、混沌を纏いドラゴンの姿になったが……。
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私の日常 異世界剣士とさくら編50(上)

 宙に浮いたかえで君が拳銃の知恵ちゃんで混沌のドラゴンを乱れ撃ちする。
 拳銃以上の火力と轟音が降り注ぎ、ドラゴンの体が抉り取られていくが、次の瞬間にはその傷は塞がっていく。
 突き出した顎から青白い光が閃くと、雷撃がほとばしった。かえで君はそれを扇状に大きく広がった赤い髪で弾き返す。
 匂いはしないけど動きは牙香蟲みたい。私はこっそり避難して、廃棄された巨大な記憶盤の陰から、それを覗いていた。
「何でさくら君があんなことに……?」

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異世界剣士とさくら編49契約暴走

あらすじ:水晶人形と苔塚のヤモリの助けを借り、星庵心は遂に術の中心部へと自転車で乗り込んでいったが……。
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私の日常 異世界剣士とさくら編49

 坂を下りる最初のうちはライトをつけて走っていたのに、底へ行くほど混沌の内側は和紙の向こうに灯りを灯したような薄明かりで明るくなっていく。
 視界の先に、折れた大太刀を構えるさくら君の姿がある。荒い呼吸であちこちに血を滲ませながら睨み据えるのは、銃口を向けて不遜に笑う赤い髪のかえで君だった。二人は対峙したまま、次の攻撃の間合いをはかっている。
 その絶妙な間合いの中に、私はとび出した。
「……って、自転車は急に止まれないいいぃ~…………っ」
 とび出しすぎた。

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異世界剣士とさくら編48水晶人形逃避

あらすじ:かえでの術に捕らわれたさくらを追い、混沌の溢れる戦場を走る星庵心は大きな穴に落下してしまうが……。
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私の日常 異世界剣士とさくら編48

 落下していたはずの体から、重さがなくなった。ふわりと宙を浮いたままだ。飛司少年が助けてくれたのかとも思ったが、全然違った。
 ぽかりと開いた妙に綺麗な六角形の穴の奥から、澄んで輝くものが現れる。
 しなやかな巨躯。右腕は赤い布で包まれ、体内はルビーが循環し、胸部にはその結晶で薔薇のコクピットが造られている。赤い水晶人形。どうしてこんな所に。
「危ねー。何でこんな所に民間人がいるんだよ。レッドアームの花道で事故なんて洒落にならねーぞ」

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異世界剣士とさくら編47戦場疾走

あらすじ:さくらを追いかけて、かえでの術で作られた偽りの果ての国へ辿り着いた星庵心だが……。
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私の日常 異世界剣士とさくら編47

 石壁の向こうは、波濤となって押し寄せひるがえる混沌のうねり。
 いくらこれが、かえで君の術による幻だとしても、あんな場所、私みたいな無防備学生が足を突っ込んでいいんでしょうか……。うあー、降ってる、うねってる、崩れてる、ビチビチしてる、渦巻いてる~……。
 腰の引けてる私に、親指で指輪姿を満喫してる賢者さんが囁いた。
『怖気づいたか』
「無論です!」
『ならば恐怖を感じぬだけの力を求めるか』
「大却下です!!」
 身も蓋もない一言を返した時、視界の端に見覚えのあるものが映った。

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異世界剣士とさくら編46果ての国幻影

あらすじ:魔族の少年かえでに記憶盤賢者の本体を奪われた星庵心はその後を追うが……。
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私の日常 異世界剣士とさくら編46

 小学生の飛司少年に何度も肩の力を抜けと叱られながら、細っこい腕につかまって空を飛んで五分もしない内に、周囲の様子が変わってきた。空を覆っていた紫色アイスクリームの雲の量が、どんどん増えて視界を遮っていく。風にのってその雲をかわしていた飛司少年が叫んだ。
「だぁー!もう無理~!!」
 壁になって立ちはだかる雲に突っ込む。上下の感覚がなくなり、体にかかる抵抗がなくなると、目の前が光で溢れた。
 いい匂いがする。眩んだ目を開けると、眼下には一面花畑が広がっていた。春みたいにうららかな陽気に満ちて、色とりどりの花が咲き乱れている。この景色、さくら君と初めて会ったときに見えた白昼夢と同じ。何でだろう。見ていると、何でかほわほわに幸せな、ゆらちゃんの笑顔を思い出す。
『術の内部だ』

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異世界剣士とさくら編45飛司少年変身?

あらすじ:良からぬ事?を企むかえで君を追いかけようとして、綾井さんの薬で昏倒してしまう星庵心だが……。
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私の日常 異世界剣士とさくら編45

 子供の泣き声が聞こえる。体が動かない……。
「うわーん!ねーちゃんごめんよー!おれが水ぶっかけたりしたせいで、こんなことになるなんて~!!」
 うう、耳元で叫ばないで……お腹に重しがあって動けないのに……。
 心地好い眠りを粉砕する声につられて仕方なく目を開けると、涙と鼻水でぐっしゃぐしゃになった男の子が枕元にいる。確か河波さんのウロコ欲しさに水鉄砲持って追い掛け回してた飛司少年だっけ。
「何でここにいるの?」
「かわなみがおどしやがるんだ。ねーちゃんにシャザイしないとしっぽで蹴るぞ……って、生き返った!!?」

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異世界剣士とさくら編44お絵描き少女VS魔族少年

あらすじ:記憶盤『世界の賢者』を狙って、自称エリート青年と魔族の少年かえで(仮名?)が夕飯時に綾井の家にやってきたのだが……。
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私の日常 異世界剣士とさくら編44

 真紅の髪のかえで君と、パラモニアギルドのナルさんが睨み合う。
 お互いの狙いは記憶盤の賢者さん。賢者さんはさくら君と契約してるけど、二人ともそんなことどうでもいいみたいだ。
 危険人物その一、その二が対峙してる間に逃げないと……。
「せーあん、早くこないと夕飯なくなるよー」
 らくがき帳を抱えたルミちゃんがぴょこりとやって来た。
「これは好機!」
 ナルさんはルミちゃんを指差して言った。

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異世界剣士とさくら編43ポニーテール少年とかわいい拳銃?

あらすじ:仙女綾井の家にも関わらず自分を訪れてきたエリート意識丸出しの金髪青年を、突然現れた少年が拳銃で撃ったが……。
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私の日常 異世界剣士とさくら編43

 撃たれた金釦金髪男性は、突如現れた少年を忌々しそうに見やる。
 そ……それだけ?
 撃たれてるんですけど。
 左腕がふきとばされて、無くなってるんですけど。
 拳銃の轟音と一瞬であったはずのものが奪われた衝撃で、硬直した私の方がよっぽど撃たれたみたいな顔をしているかもしれない。
 気分の悪さに俯いた視界に、奇妙なものが見えた。

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異世界剣士とさくら編42ナルシストなエリートと……

あらすじ:美人仙女(しつこい?)綾井の豪邸でずるずると引きずってきた風邪を治してもらった星庵心は、お礼に夕飯を作ることにしたが……。
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私の日常 異世界剣士とさくら編42

 塩をひとつまみ入れたコーンスープの味見を済ませて、下処理をしたエビに塩、コショウしてから衣をつけているとルミちゃんがお絵描き道具と刀の賢者さんを抱えて、キッチンにやって来た。お客さんが来たから、綾井さんにこっちへ移るように言われたらしい。
 細かなレースのクロスがかかったアンティークの大テーブルに持ってきた一式をごちゃごちゃと並べると、ルミちゃんはお絵描きの続きを始める。それにしてもこんな時間にお客さんか……ご飯とかどうするのかな。
「お客さんって、どんな人だった?」
「こんな人~」
 ルミちゃんがらくがき帳に描いてみせたのは、足の部分だけがべろ~んと長い、折り紙でよく見る感じのやっこさんだった。

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異世界剣士とさくら編41美人仙女は下界好き?

あらすじ:熱でふらふらしながらも、星庵心は仙女の綾井の家に辿り着く。そこには宇宙船で会った小学生のルミもいた。
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私の日常 異世界剣士とさくら編41

 良薬は口に苦しが定番だけど、綾井さんから渡された薬湯は、喉越しの良い甘さしかなく、思わずおかわりを要求しそうになったほどだ。
「ごちそうさまです。これ本当にお薬?全然苦くない」
 鞄の中から時計の賢者さんを取り出しながら聞いてみる。いきなり『刻限だ』とか言われて元の刀に戻るときに、鞄を突き破られたら困るので。
「だって下界の材料使ってないものぉ」
 特大サイズ液晶テレビの前で、幾ら見てても見飽きないくらい美女な綾井さんが録り溜めたらしいディスクを並べて言った。

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異世界剣士とさくら編40美人仙女とお絵かき少女

あらすじ:さくらがこちらの世界へ来ることになった経緯を本人から聞いた星庵心は、次の日兄のメールに疲労を感じつつも綾井の家へと向かった。
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私の日常 異世界剣士とさくら編40

「いらっしゃ~い。待ってたわよぉ」
 うにゃー!?すっごい美女な女神様が出てきたー!?
 お、おかしい。私が押したのは綾井さんの家のインタフォンなんだけど。
 それとも熱が上がりすぎて、あの世の呼び鈴鳴らしちゃったとか。
 そうだよ、絶対。でなきゃ、こんな万人を殴り倒す勢いの美女なんかいないよね。でも、こんな美女な女神様がいるってことは、ここは天国?おかしいなー、私そんなに日頃の行い良かったっけ~?

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異世界剣士とさくら編39契約の言葉

あらすじ:星庵心は綾井の家へ向かう途中、昨夜に聞いたさくらからこの世界へ来たいきさつを思い出していた。
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私の日常 異世界剣士とさくら編39

 リビングのソファに腰掛け、さくら君はぽつりぽつりと自分のことを話してくれる。
「戦場での暮らしに疑問を持ったことは無かった。師に会うまでは。
 師は諸国を巡る剣士で、その働きには俺の到底及ばぬ深みがあった。
 混沌にまみれた戦場が違う場所にすら見えた。
 それが何であるのか、究めてみたいと思った。
 俺は師に弟子入りし、諸国を巡りながら厳しい修行に明け暮れた」

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異世界剣士とさくら編38果ての国

あらすじ:町田の案内で山の鳥居に辿り着いた星庵心。そこで町田の仕事とそのリスクを垣間見るが……。
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私の日常 異世界剣士とさくら編38

 綾井さんの留守電に気付いたのは、次の日の講義が終わってからだ。
『あやいで~す。明日ちょうどお休みがとれたからぁ、ガッコ終わったらすぐあたしの家に来てぇ。お楽しみいっぱい用意して待ってるからぁ』
 賢者さんがケータイを使えないように電源を切ったままにしてたのは失敗だった。
 まだ熱があるし、本当は帰って眠りたかったけど、仕方ない。向こうは仕事までお休みしてるのに、また今度っていうのも気が引ける。
 お洒落ケーブルで山を下りると、電車に乗り換えた。河波さんに会いに行ったときとは逆方向だ。着くまでおよそ五十分弱はかかるかな。

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異世界剣士とさくら編37鳥居の蝶

あらすじ:宇宙船での記憶を求めて次に会った町田は、星庵心を朽ちた鳥居へと導いたが……。
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私の日常 異世界剣士とさくら編37

 小道には土を削った足跡。滑り込んで横倒しになった草。朽ちて傾いだ鳥居には、撫でてついた真新しい指のあと。
 やっぱりここ、昨日の夜に正体不明の誰かに追いかけられた場所だ。
 そういえば、随分前に地主さんから、昔は神社だか祠だかあったらしいけど、みたいな話を聞いたような。うーん、こういう話は思い出せるのに、どうしてごく最近の半日の記憶が思い出せないんだろう。
「何の神社かな……」
「鳥居だけじゃわからないな」
 仰いだ町田さんが呟く。
「あ、そうなんですか?」

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異世界剣士とさくら編36アヤしい賢者さん、はいつものこと

あらすじ:ようやく起きたさくら君の、ペットボトル破壊の後片付けなどしつつ、宇宙船で出会った三人目の人物町田に会いに行く星庵心だが……。
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私の日常 異世界剣士とさくら編36

 大学の桜並木を眺めていたその人は、私に気付くと静かに会釈する。
 黒い服で身を包んだ姿が、降る桜の花びらに紛れて霞んでしまいそうだ。
「あの、すいません。わざわざ来て下さって。ええと、町田さん」
「気にしなくていいよ。仕事の途中だ」

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異世界剣士とさくら編35ペットボトル破壊…

あらすじ:人魚の河波と会った帰り、ケーブル線から降りた星庵心は暗闇で謎の人物に追いかけられ、危うく摑まりそうになる。賢者の助言でどうにか事なきを得るが、山の空気は冷たかった……。
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私の日常 異世界剣士とさくら編35

 それにしても今日の講義が午前中だけで助かった。体温計を確認して溜息をつくと、出かける準備を整える。もうすぐ町田さんがケーブルに乗ってやってくる頃だ。
 玄関に向かいかけたとき、キッチンから物音が聞こえた。覗いてみると、見覚えのあるみつあみが揺れている。
「さくら君、起きたの」
 不意に話しかけたせいか、さくら君は急に振り返ると、中腰になって身構える。
 ものすっごい戦闘態勢をとられているのに、確かにそれで殴られたら痛いんだろうけど、こちらに向けられた手に二リットルのペットボトルを握っているので怖さ半減です。
 ああ、起きたらまた眉間にしわが出来てる……。寝顔はかわいいのに。

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異世界剣士とさくら編34夜の山

あらすじ:世界を守りたがる赤ロボット搭載者と河波の人魚鱗を欲しがる精霊使い少年のお子様サミットには多々虚偽が含まれていることを実感しつつ、宇宙船での失われた記憶の手がかりを求める星庵心だが……。
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私の日常 異世界剣士とさくら編34

 コトコトと山を登っていくケーブルの、静かな振動が心地好い。
 大学のデザインと同じ、大正モダンとアールヌーボーのほどよくミックスしたレトロ仕様の木枠の窓から外を覗くと、いつも見えるはずの雑木林も竹林も、夜を迎える空気にとろけてしまっている。
 河波さんに快く献血して頂いた後、しばらく喋っていたけれど、宇宙船での出来事を思い出せるような感触はなかった。それどころか話を聞いていると、くすんだ膜に包まれたような、もどかしさばかりがお腹の底に溜まってくる。

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異世界剣士とさくら編33人魚とお茶

あらすじ:河波の鱗をほしがる小学生に追われた星庵心は公園に逃げ込むが、宇宙船で赤い水晶人形にのっていたアイドル顔の少年が仲裁に入るかと思いきや、小学生と意気投合してしまったりでバックダンサーズは苦労が絶えません。
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 私の日常 異世界剣士とさくら編33

 狭くて寒い公園からこっそり逃げた場所は、駅近くの商業施設の中にあるダイニングカフェだった。これでまたさっきの人たちとかち合ったら洒落にならないけど。
 あー、おしぼりがあったかい……。強風に散々あおられて半乾きの状態だけど、かけられたのが塩水だったからか、ちょっと体がかゆい……。
「ころりん、ごめんねー。巻き込んじゃって。今度飛司のやつ徹底的にとっちめとくから」
 いや、徹底的じゃなくていいんですが。
「なんかガイアなんたらとか言ってたけど」
 河波さんが苦笑する。
「ああ、あれ。飛司のやつ戦隊ヒーローものとか好きだから、自分で勝手に名前付けてんだよ。葉守とか澪海は嫌がってんのにさー。どういう経緯かは知らないけど、精霊が使役できるようになったからうかれちゃって、手がつけらんないんだよね」

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異世界剣士とさくら編32赤ロボットパイロットと精霊少年

あらすじ:追っていたのは水鉄砲を抱え、人魚の河波の鱗をほしがる小学生だった。荷物の重さに息切れした星庵心は公園に逃げ込むが、その時現れたのは宇宙船で赤い水晶人形にのっていたアイドル顔の少年だった。て、心は覚えておりませんが。
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私の日常 異世界剣士とさくら編32

 突如現れたアイドル顔の少年の後ろには二十代の男女が控えていた。
 パリコレのモデルばりにお洒落なお姉さんと、顎鬚が渋くて体格のいいお兄さん。
 お姉さんは右目に、お兄さんは左目に黒い眼帯をしているので、必要以上に迫力がある。
 二人とも黒っぽい服なので、何だかアイドルとバックダンサーって感じ。
 河波さんはこの人達を知ってる風だけど、さっきから私の体を盾にして、三人組から隠れようとしてるので、若干声が掛け辛い。
「何だよ、お前。返せよっ」
 全然いい子にしてない飛司少年が、三人の迫力をものともせずに、アイドル顔中学生にしがみつく。

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異世界剣士とさくら編31人魚と水鉄砲少年

あらすじ:失われた記憶を取り戻す手がかりを求めて、星庵心は刀の賢者を連れて、宇宙船で知り合った人魚の河波に会うことになったが、何故か全力疾走を強要される事態に……。
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私の日常 異世界剣士とさくら編31話

 最後に青くつき抜けた空の下を全速力で走ったのはいつの頃だったろう。中学生?高校の頃?
 聞こえるのは自分の呼吸だけ。
 軋む体の痛みも、目の前に広がる真っ白い光に飲み込まれていく。
「こっ、ころりん!倒れるよっ!」
 河波さんの声で我に返ると、どうにか体勢を整える。ランナーズハイかと思ったら、単にしんどいだけだった。
 テキストが入った鞄は重いし、図面ケースは段々重くなってくるし……。賢者さん、子泣きじじいですか……。
「しょうがない、こっち来て」

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異世界剣士とさくら編30人魚をまちぼうけ

あらすじ:さくら君の寝顔はかわいいけれど、とりあえず自分の記憶がないのは問題だとようやく実感し始めた星庵心。家の近辺では銃を持った不審人物の目撃情報が……。
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 私の日常 異世界剣士とさくら編30話

 次の日講義が終わると、カバンと図面ケースを抱えて私はケーブルに乗った。ふもとの街まで下りると、そこから電車に乗って一時間もかからない駅で降りる。
 駅前の案内板を見ると、この辺は商業施設と会社の入り混じったビルの立ち並ぶ、オフィス街になっているようだ。
 ここで会う約束になってるんだけど、人通りが多い。私は河波さんのことを、全然覚えてないから、分かるかなあ。

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異世界剣士とさくら編29さくら君寝顔かわいいですよ?

あらすじ:記憶を取り戻す為に明日から宇宙船で知り合った人たちと会うことにした星庵心だが……。
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私の日常 異世界剣士とさくら編29話

 窓の端に体を預けて、外を眺める姿勢のまま、さくら君は眠り込んでいた。
 ゆらちゃんのこと考えてるうちに、うとうとしたんだろうけど、これは何というか……熟睡してる?どれだけそばに寄って覗き込んでも、指でほっぺをぷにぷにしても、全く起きない。

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異世界剣士とさくら編28カワイイ賢者さん?

あらすじ:ゆらの提案で、忘れた記憶を取り戻すべく宇宙船で遭遇した人たちと連絡をとることになったが……。
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私の日常 異世界剣士とさくら編28話

 みんなに連絡を取るため、外に出ていたゆらちゃんが戻ってきた。
 うちの家はどういうわけか昔っから電化製品といまいち相性が悪い。
 その為、どのご家庭にもありそうな電子レンジが、我が家には無い。未だに私は使い方が分からなかったりする。冷凍食品も使わないので、困ったことはないんだけど、その話を人にすると大抵「昭和の女」というびみょーな称号がもれなく付いてきたりする。

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異世界剣士とさくら編27可愛すぎゆらちゃんと連絡網

あらすじ:ゆらのびみょ~な治癒能力で足の怪我を治してもらう星庵心だが……。

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私の日常 異世界剣士とさくら編27話
 
 いつの間にか閉じていた目を開けると、おでこ同士がくっつくぐらいの距離でゆらちゃんが覗き込んでいた。
 うあっ!可愛すぎるっ!!
 長いまつげに大きな瞳。さらさらの髪からほんのり春の日差しみたいな幸せの香りがする。
 心臓が不整脈の人に負けないぐらい、ものすっごいドキドキしてる!
 好きなのか?私はゆらちゃんが好きなのか?!てことは、ライバルだな、さくら君!おねいさん、容赦しないからね!!

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異世界剣士とさくら編26癒しのゆらちゃん

あらすじ:ゆらから聞いた話をまとめて、筋肉痛の謎は解けるも、やっぱり何も思い出せない星庵心。しびれを切らして話に割り込んできた賢者が怪我をしてるらしいと気付いたゆらが、治そうとするが……。

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私の日常 異世界剣士とさくら編26

 ゆらちゃんはおもむろに、細くてすべすべの手を刀の賢者さんにかざした。
 特に何も起こらず、数秒が経過。
 あ、いや、賢者さんの鞘や柄から音がする。すごく小さな高い音。
 泡がはじける時の、プチプチという音に似てる。
 リビングの時計の音にまぎれて、その音は聞こえなくなっていく。
 かわりにゆらちゃんが短く息を吐き出した。

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異世界剣士とさくら編25口からはみ出す宇宙船騒動

あらすじ:虹望ゆらに記憶にない昨日の出来事を聞いてまとめてみようとする星庵心だが……。

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私の日常 異世界剣士とさくら編25

「ゆらちゃんと人魚の河波さんと仙女の綾井さんと赤いロボットを動かす町田さんと、お絵かきするルミちゃんと、記憶があった時の私の話をまとめると、昨日の午後に宇宙船に婦女子ばかりが連れ去られて、自分から宇宙人だと名乗ったイケメンだけどクセのあるクラインさんが、たくみなセールストークで地球人生活習慣調査の名目で面倒臭いアンケートの協力者を選出して、胡散臭さを感じつつ、アンケートに協力した帰りに、私が忘れ物を取りに戻ってクラインさんの毒牙にかかりって毒牙って何の毒牙だ、みんなの記憶が消されるというショーゲキの真実を知り、これはいかんとゆらちゃんと河波さんが手持ちのホタルイカを」
「スルメイカです」

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異世界剣士とさくら編24うめぼしで~す

あらすじ:昨日の記憶のない星庵心の家に、虹望ゆらが訪れた。


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私の日常 異世界剣士とさくら編24

 刀の賢者さんを小脇に抱え、お菓子とお茶を持ってリビングへ戻ると、ゆらちゃんは壁にかかったカレンダーを眺めていた。
 その手に赤ペンを握っている。
 一週間後の日付に、丸印がついている。おもむろにゆらちゃんがその丸印を、持ってたペンで塗り始めた。

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異世界剣士とさくら編23ひみつのさくら君

あらすじ:「星庵心です。早朝散歩で刀を持った少年と遭遇して、今にも倒れそうだったので家に連れ帰ることにしました。名前はさくら君(仮)。何とか落ち着いたかなとか思った矢先、ゆらちゃんという、やたらきゅるり~んな美少女がやってきてデンパなこと……もとい、天然さん発言炸裂なんですが、どうしよう……私、何にも分かんないんですけど……。忘れてるって、どういうこと?」

 うわ~、年がかなり明けてしまいました……。繭式です。昨年は『私の日常』を読んでくださいまして、本当にありがとうございました。そしてご心配おかけしました。一時お休みさせていただきましたが、どうにかお陰様で再開できる状態になりました。更新は多分週一ぐらいのペースになると思いますが、今年も地道にコツコツ書きますので、湯たんぽでぬっくぬくのお布団みたいにあたたかい眼差しで見守ってくださいませ……。
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私の日常 異世界剣士とさくら編23

 さて、少年の名前がさくら君と正式決定したところで、ゆらちゃんに家に上がってもらおう。
 私が彼女を知らないとはいえ、向こうは私をわざわざ訪ねてきてくれたわけだし。夢に出てきたクラインさんという人の話も聞いてみたい。
「ところで、それ自転車用のヘルメット?」
 ゆらちゃんが腕に抱えてるのは、よくスポーツバイクに乗ってるヒトが被ってる、かっこいいデザインの、穴の開いたヘルメットだった。
「これ、女性用?」
「はい~。245グラムです」
 う~ん、私は被ったことがないから比較できないけど、ゆらちゃんのは色使いも春の色っぽくて軽そうに見える。
「あれ?てことは自転車で来たの?近所?」

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異世界剣士とさくら編22少年さくら君

虹望ゆら「一日しか経ってないんですけどお久しぶりです~。あらすじです。星庵さんの家を訪れたんですけど、わたしのこと覚えていなかったんです……。謎です。はっ、まさかクセの強そうなクラインさんが星庵さんによからぬことを……!」
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私の日常 異世界剣士とさくら編22

 私の言葉に、少女がきょとんとした瞳で見つめ返してくる。
 私の名を呼んだ少女を、私は知らない。
 そんな私を静かに見つめてから、少女は言った。
「……星庵さん、もしかして昨日のこと、まるごと全部忘れてますか?」
 えっ、昨日?な、何だろう。何かあったっけ?
「ええと、忘れてること自体あったのかも分かんない」
「みなさんのことも?」
「み、みなさん?」
「河波さんに、町田さんに、ルミちゃん、綾井さんっ」
「うわっ、誰誰誰!ちょ、ちょっと待って!」
「クセの強そうなクラインさんはどーですかっ」

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異世界剣士とさくら編21訪れためるひぇ~ん美少女

ふみ兄「おう、あらすじだ!刀を持ってしかも汚れまくった少年を家で休ませることにした俺の妹。いや~、昔っからいろいろ拾って来るんだよ。小学生の時は(割愛)にも関わらず、いきなり掃除を始めてしまった!兄は悲しいぞ!少年を休ませる気はあるのか?しかも家事疲れでウトウトしかけたときにインタフォンが鳴った!こんな時はやっぱり愛を込めて居留守だな!?」
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私の日常 異世界剣士とさくら編21

 半分ぐらい眠った頭で、出ようかどうしようか中途半端に悩んでいると、下の階から廊下を全力疾走する足音が響いて玄関に向かっていく。
 ああっ、居留守が使えない!
 くっつきかけた瞼をこすりながら、階段を降りていく。玄関を見やって、危うく足を踏み外しそうになった。

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異世界剣士とさくら編20お粥と訪問者

あらすじ:別の世界から来たらしい刀を持つ少年と出会った星庵心。衰弱したその少年を家まで連れ帰る。やっとお風呂に入ってもらったら、けっこうオトコマエ?
 
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私の日常 異世界剣士とさくら編20

「簡単だけど」
 少年はリビングのテーブルに用意されたお粥を見るなり、急に頭を下げて、なかなか動こうとしなかった。うう、却って恐縮するなあ。
 少年を促してやっと席についてもらう。お茶のときと同じで、時間をかけて食べ始める。食べられるってことは、味覚はそんなに変わらないのかな。
「洗濯物干してくる。それ全部食べても構わないから」

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異世界剣士とさくら編19重さのヒミツ

あらすじ:刀を持つ少年を家に連れ帰った星庵心。だけど少年はお風呂の入り口に刀の賢者さんを立てかけてたりして、警戒されまくり。

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私の日常 異世界剣士とさくら編19

 籠の中にはコートや服が入っていた。見られるのを気にしてか、きちんと綺麗に折り畳まれていた。
「着替えの服、ここに置いておくね」
「分かった」
 少年の声がちょっと緊張している。だから開けたりしませんってば。
「じゃあ、これ洗濯に……」
 持ち上げた籠を手から取り落とした。それが足の甲にまともに当たる。
「……!?」
 い、痛い!重い!!!

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異世界剣士とさくら編18旅人のお風呂

あらすじ:記憶盤との契約で名を無くした少年を家まで連れ帰った星庵心。玄関で気合いの入りまくったふみ兄を見送った。でも帰りは多分早いんだろーな……。

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私の日常 異世界剣士とさくら編18

 靴のまま上がりかけた少年を制止して、靴を脱ぐように言うと、盥に水を、と請われた。
 少し待ってもらって、お風呂場をのぞいてみる。
 思ったとおり、先にふみ兄が使ったようで、浴槽にはお湯が張ってあった。
 盥に水……どのぐらい必要なんだろう。
 とりあえず洗面器でバケツにお湯を移しかえて持っていく。
「これは……かたじけない」
 お湯が出てくるとは思わなかったらしい。

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異世界剣士とさくら編17犬少年?

あらすじ:記憶盤『世界の賢者』との契約で名前をなくした少年。衰弱した少年を休ませようと、星庵心は自転車にのせて家まで連れ帰った。

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私の日常 異世界剣士とさくら編17

 それにしても家から出てきたふみ兄の格好が、どうみてもホストみたいに見えるのは何故だろう。
「楽しみにしておけ、こっこ!おれは今から難攻不落のスケジュールを書き換えに行く!!」
 それって、取材相手にデートのお誘いするってこと?
 朝からテンション高いなー。だけど、そんな気合いの入りすぎた服で行ったら、相手に絶対引かれるって……。

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異世界剣士とさくら編16自転車で

あらすじ:刀の姿をした記憶盤、世界の賢者との契約により自身の名前を無くした少年の様子がおかしくなっていた。

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私の日常 異世界剣士とさくら編16

 とっさに伸ばした腕に、ずしりと少年の重みがかかる。あれっ、さ、支えきれない……。
 引きずられるように自分の体まで傾いていく。
 桜餅の入ったパックが地面に落ちる。
 倒れるかも、と思った瞬間、その重みが無くなった。
 ガリガリと靴底が地面を踏みしめる。
「……大丈夫?」

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異世界剣士とさくら編15花の名

あらすじ:話の分かる理事に刀を持った少年の存在を大目に見てもらったものの、今後のことをさっぱり考えてなかった星庵心。

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私の日常 異世界剣士とさくら編15

 刀の賢者さんとの会話で、行く先が決まってないのはそれとなく分かってるけど。
 ああ、なんだか本気でやつれて疲れ果ててるなあ、この子。
「これ食べる?」
 時計になった賢者さんを渡しがてら、理事からの差し入れを少年に差し出す。
 途端に緊張感みなぎる姿勢で、眉間にしわをつくる少年。
 ビニールのシャカシャカ音が耳に馴染まないんだろうか。
 あの……なんかものすごく自分が威圧されてるみたいで落ち着かないので早く受け取って欲しいなあ……。

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異世界剣士とさくら編14ゴミの行方

あらすじ:用務員だとばかり思っていた最強のおやじは自分が通う大学の理事だった。それより明らかに不審人物な少年が通報されないか気が気じゃない星庵心。

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私の日常 異世界剣士とさくら編14

「うん、そう。で、それは?」
 駒月理事の視線を追うと、先にあるのは少年が手にしていた賢者さんだった。
「これは……」
「ゴミです!!」
 少年の言葉を遮って、私は力強く言い切った。
「おもちゃの刀です!花見客が捨てていったんじゃないですか?本当困りますよね~」

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異世界剣士とさくら編13危ないネーミング?

あらすじ:急変した少年の態度に困っていると、用務員のおじさんが様子を見にやってきた。

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私の日常 異世界剣士とさくら編13

 確か用務員さんは別館の掃除に行ってたんじゃなかったっけ?私がゴミ拾いの最中に桜に見惚れて意識を飛ばしてるのか様子を見に来たのかしら。
 ど、どうしよう~。古いコートにみつあみにしゃべる刀。明らかに少年が不審人物だ~。
「おや、そっちの子は?」
 なるべく視界に入らないように少年の前に立っていたけれど、そんなちゃちな小細工は用務員さんには通じなかった。

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異世界剣士とさくら編12女?男?

あらすじ:賢者の陰謀(?)で刀に触れた星庵心。夢の中、奇妙な風景とそこにいる少年の姿を垣間見る。
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私の日常 異世界剣士とさくら編12

「賢者!よせ!」
 気色ばむ少年の声が耳元で聞こえた。あれ……さっきまで見えてたのが消えちゃった。
 白昼夢?はっきり顔は見えなかったけど、階段にいた少年って……。
 ぼんやりしていると腕がつかまれて、手のなかにあったものを引き剥がされた。
 ふっと力が抜けて、膝が崩れる。
 腕をつかんだ少年のおかげでどうにか転倒は免れたが、握る力が強すぎて却って痛い。これなら倒れた方がいい……。

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異世界剣士とさくら編11記憶の奥

あらすじ:謎の少年が持つ刀は自らを世界の賢者と名乗った。少年の行動に不安を感じた星庵心は、刀を隠すように提案するが逆に協力するよう要請される。
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私の日常 異世界剣士とさくら編11

「協力?」
「よせ」
 少年の賢者さんに向けられる声が鋭い。
「聞くな。賢者は代償を求める」
 ペットボトルのふたを閉めなおし、賢者さんをつかむと少年は立ち上がった。
『只の提案だ。契約とは違う。機能が少しでも回復するほうがよかろう』
「世話になった。恩に着る」
 いや、お茶をあげただけなんですけど。しかも半分も飲んでないし。

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異世界剣士とさくら編10記憶盤

あらすじ:言動のどこかズレた少年と出会った星庵心。彼の持つ刀から聞こえたのは、冷たい男の声だった。
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私の日常 異世界剣士とさくら編10

 少年の行動に度々危険な一言を投げかけていた声が、刀から聞こえる。
 正確には声じゃないかもしれない。何だか耳の奥に直接響いているような、囁きに近い。
 それでもその声が、少年の持つ刀から聞こえたものだというのは分かる。
「これしゃべるの……?」
『これは契約者が望んだ形に過ぎない。本来は記憶盤であり、私は世界の賢者と呼ばれている』

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異世界剣士とさくら編9もう一人?

あらすじ:謎の遊歩道で刀を持った少年と出会った星庵心。やつれた少年の言動はどこか古めかしくて奇妙だった。
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私の日常 異世界剣士とさくら編9

 ふたが外れたのを確認すると、少年は音もなくその場に胡坐をかいた。鼻を近づけて、あるかないかの匂いを確かめ、ひとくち濡らす程度に口にふくむ。
 随分慎重に飲んでるなあ。普通の三年番茶なんだけど……。
「良い庭を持っているな」
「ここ大学の敷地……」
 こんな庭が自分の家にあったら、一日のんびりお花見できていいだろうなあ。

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異世界剣士とさくら編8お茶の時間?

あらすじ:謎の遊歩道でゴミ拾いをしていた星庵心。出会った少年に危うく刀で斬られそうになるが。
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私の日常 異世界剣士とさくら編8

 少年は背を向けたまま。
 今のうちに目の届かないところへ行けと、その背中が言っている。まっすぐとのびた背筋。風でコートが小さくたなびく音だけが聞こえる。
 ……はあ、ゴミ拾い、じゃなくて、遊歩道でお花見続けたかったな……。

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異世界剣士とさくら編7花びらと少年

あらすじ:謎の遊歩道でゴミ拾いをしていた星庵心。一人の少年を発見するが、なにやら不穏な状態に。
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私の日常 異世界剣士とさくら編7

『斬るのか』
 再び、さっきの冷ややかな男の声がした。
 すぐそばで聞こえるのに、視界に入るのは少年の姿だけだった。
 少年は何もこたえない。
 

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異世界剣士とさくら編6少年と声

あらすじ:早朝散歩で用務員の陰謀(?)に巻き込まれ、遊歩道でゴミ拾いをすることになった星庵心。角を曲がったとき、一人の少年と出会った。

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私の日常 異世界剣士とさくら編6

 散る花びらの道と、頭上からかぶさる桜の枝に包まれて、ともすると見落としそうになる場所。
 壁の隅に、隠れるように座り込んだまま、両膝を抱えた腕に額をつけて、身動きひとつしない。
 吹き溜まりになっているせいか、頭から肩から、靴のつま先まで、そこに許される限りの淡い花びらが降り積もっていた。
 いつからここにいるんだろう。

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異世界剣士とさくら編5遊歩道で…

あらすじ:用務員さんにゴミ拾い要員にさせられて、教えられた遊歩道は満開の桜で埋め尽くされていた。
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私の日常 異世界剣士とさくら編5

 歩く小道の境界も、淡い花びらに埋め尽くされ、はっきりとしない。
 おっと、空のペットボトル発見。
 ……うう、ゴミを見つけると我に返ってしまう自分が悲しい。
 それにしても、どういう造りになってるんだろう、ここ。

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異世界剣士とさくら編4扉の向こうの

あらすじ:体に違和感を覚えつつも、早朝のとある施設にもぐりこんだ星庵心。が、用務員さんにあっさりみつかり、さっくりゴミ拾い要員にされてしまう。

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私の日常 異世界剣士とさくら編4

 今日は休みだし、時間的な制約があるわけでも、散歩に何かしらのルールを設けているわけでもないから、たまにはこういうのもいいかもしれない。
 あの謎の遊歩道でお花見が出来るのは事実だし。
 私もふみ兄から、そういうものがあるらしいという曖昧な話を聞いたぐらいで、実際にどういうものかは、全く知らなかった。
 なぜ遊歩道が曖昧な話になるのかと言えば、どこにあってどうやって入るのか、見つけた人にしか分からないからだそうだ。
 目の前にこんなに分かり易く入り口開いてるのになあ……。

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異世界剣士とさくら編3朝の散歩

あらすじ:宇宙船の騒動から何とか無事帰れたはずの星庵心。だが何か忘れている感覚のまま、早朝から散歩の計画を練りだしていた。

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私の日常 異世界剣士とさくら編3

「ごちそうさま。散歩行ってくる」
「おう、ちょっと待て」
 ふみ兄がいそいそ用意したものは、淹れたての三年番茶だった。
 愛用の小さなステンレスボトルにお茶を入れて、ホルダーにセット。準備万端である。
「やっぱ、両手使えた方がいいだろ」
「バレた?」
 何でこういうときだけ、私がやりたいことが分かるんだろう。
「あそこのおやじは手強いぞ。みつからんようにな。おみやげよろしく」

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異世界剣士とさくら編2スルメ?

あらすじ:宇宙船で大騒ぎに巻き込まれた星庵心。個性の強い人たちのサポート?で、無事地球に戻れたはずだったが、なんだか思った以上にぼんやりしている……大丈夫か?

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 私の日常 異世界剣士とさくら編2

 一階に降りると、台所には先客がいた。兄だ。
 ここでごそごそしてるってことは、仕事がひと区切りついたみたい。
 星庵文。名前に兄をくっつけて、私はふみにい、と読んでいる。
 ふみ兄は小説を書いている。らしい。
 らしいというのは、書いているところを、私に見せたことがないからだ。
 担当の編集者さんとかが、たまに自宅に原稿を取りにくることがあるので、一応肩書きどおりの仕事はしているようだけど。恥ずかしがって私には見せてくれない。その辺の心理は小説を書いたことがない私には分からんですなあ。
 入り口でぼんやりしていた私に気付いて、ふみ兄は持っていたフライパンをちらつかせる。
「おはよーさん。めだまやき、食うか?」

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異世界剣士とさくら編1夢の感触

 電子の小道に落っこちている繭式の日記帳を拾って下さってありがとうございます。
 今回から『宇宙編と日記編』の続き、『異世界剣士とさくら編』です。ようやくタイトルがファンタジーっぽくなりました……。お時間があるときは、この日記帳をめくってやってください。
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私の日常 異世界剣士とさくら編1

 ここにある。
 いつか見たいと思っていたもの。
 地球。
 大気圏外から見る地球の青さは目に沁みた。
 夢だ。とてもいい夢。大きな暗い部屋の、鏡面めいた床には、自分の姿が映っている。
 自分の両隣にそれぞれひとつずつ、影がある。
「何を隠しているんです」
 左隣に立つ男の人が言った。顔は見えない。
 地球は夜になっていたが、煌々と輝く電光が首都圏を中心に、網を広げて地球を侵食している。明るすぎて、どんな表情をしているのか窺うことはできない。
 私はその人のことを、クラインさんと呼んでいた。
「あなたの隣に、何を隠しているんですか」

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宇宙船と日記編50約束の…

あらすじ:ようやく宇宙船から地球に帰れた星庵心たち。記憶操作にかわるクラインからの提案とは。

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私の日常 宇宙船と日記編50

 クラインさんと再会したのは、それから一週間後のことだった。
 土曜の短い講義を受けて、大学から自宅まで、自転車で戻る途中。竹林の細い通学路に、完璧な営業スマイルで、どこかの国の王子みたいに手を振るクラインさんが立っている。竹林に宇宙人……楽しい取り合わせだ。
「おや、これから歯の治療にでも?」
 まあ、こっちの営業クラインさんの方が、コワくなくていいんだけど。
「お約束のものです」
 うっ、来たな、記憶操作の代替案。

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宇宙船と日記編49大団円??

あらすじ:綾井の巻き物のせいで(?)大混乱に陥った巨大イカ騒ぎもようやく、一段落つきそうな、そうでないような……。

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私の日常 宇宙船と日記編49

 宇宙船から地球の我が家まで、帰宅できるかどうかという、私の心配をよそに、クラインさんは事後処理が一段落済むと、さっさと帰りの便まで私達を案内し始めた。
 帰りの小さな船は、黒い雫のオブジェみたいな形をしていて、床から浮いていなければ、これが宇宙船だとは到底見えない。
 黒い雫の前には、別室で待機させられていた河波さんとルミちゃんの姿もあった。
 私の隣には寝起きのぽやぽやした表情のゆらちゃん。
 きっちりと黒ずくめの姿で先に帰る赤い水晶人形を見送る町田さん。
 笑顔でクラインさんの部下の人達からの熱視線と声援と握手に応える綾井さん。
 それをひまそ~にあくびしながら眺めているミケちゃん。
 ……あれ。

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宇宙船と日記編48イカ騒ぎの原因?

あらすじ:ようやくイカの中から救出された星庵心とゆら。

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私の日常 宇宙船と日記編48

 イカで暴れたのが夢オチになってるのは、やっぱりゆらちゃん本人がほとんどイカの中で眠ってたからだろうか。まあ、それでいいのかもしれない。全部が全部ゆらちゃんの無意識による結果ではないだろうし。巨大イカだって、ゆらちゃん河波さん作のと、ルミちゃん作の分と、あとここで暴れまくってた巨大イカとか、増殖して津波になった小イカとか、性質の違うのが色々いたからなあ。
 まだ宇宙船に残ってるんだろうな、小イカたちとかは。クラインさん、大変だ。
 今も部下の人達に指示を与えて忙しそうにしている。
「はあい、吸い込み完了ぉ」
 綾井さんはそう言って、巻き物を巻いて紐をかたく締めた。
「綾井さん、それ……」
 ルミちゃんがイカの絵を描いて、水が溢れまくってたものでは。

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宇宙船と日記編47少女の夢

あらすじ:水晶人形に倒される巨大イカ。星庵心は意識を失ってしまう。

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私の日常 宇宙船と日記編47

 風が流れる。強い風が余分な闇を払っていく。
 目の前に残ったのは、細く、けれど、しっかりと形の整った文字の列。
 日付ごとにびっしりと書かれた予定と出来事。
 毎日行う、基礎体力をつけるための運動。
 毎日世界から伝えられる科学的な調査や研究。
 それは彼女が望む、ひとつのことへの道しるべ。
 自分の住む星を宇宙から見るため。
 いつか必ず、宇宙へ行くためのスケジュール。
 だから、クラインさんが許せなかったんだ。
 自分が見たくてたまらなかったものを、目の前にぶら下げて、簡単に取り上げようとする人が。

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宇宙船と日記編46遠慮無し…

あらすじ:赤い水晶人形から三人の搭載者が出てくる。その内の少年と何らかの確執がある様子の町田。なんとな~くそれを眺めていた星庵心は、ゆらの意識がクラインを攻撃するのを止めようとするが。

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私の日常 宇宙船と日記編46

 腕に衝撃が伝わる。床に響き渡る、破砕音。
 吐き出す息が荒い。体の力が抜けきってしまったみたいだ。
 赤い布。
 巨大イカの足に、赤い水晶人形の布が巻き付いている。
 その足から少し離れた場所に、クラインさん達がいる。
 どうやら無事みたい。よ、よかった~……。

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宇宙船と日記編45イカ目線

あらすじ:巨大イカの体内でゆらを発見するものの、彼女は眠り続けている。何故かイカを動かせる星庵心は、襲ってきた赤い水晶人形を咄嗟に平手打ちしてしまう。

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私の日常 宇宙船と日記編45

 赤い水晶人形から出てきた少年は、こちらが動かないのを確認すると、町田さんに声をかける。
「何でアンタがこんな所に」
「あなたがそれを言うのか」
「オレはアンタと違う!」
 特に責めてるわけでもなく言った町田さんの言葉に、過敏に少年が噛みついた。
 町田さんは少年を一瞥しただけで、言い返したりはしない。黙って、水晶人形の開いた薔薇の部分に腕を差し出す。すると、その腕につかまって、中から人が出てくる。また、一人。
 少年を含めて、あの赤い水晶人形には三人乗っていたんだ。

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宇宙船と日記編44赤い水晶人形の搭載者

あらすじ:ゆらを探していた星庵心は、イカの体内で眠り続けるゆらを見つけた。

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私の日常 宇宙船と日記編44

「ゆらちゃん」
 呼びかけても反応はない。ゆらちゃんは体をまるめたまま、眠り続けている。
「ゆらちゃん、起きて」
 再度呼びかけたとき、体に衝撃があった。赤い水晶人形が体当たりしてきていた。
 イカの体を倒そうとしているらしい。そのまま水晶人形がしがみつく。
「うきゃ~!」
 また奇声を上げていた。む、胸触られた~!!
 反射的に腕が動いていた。掌に軽い痛みが走る。
 ……ああっ、平手打ちしちゃった!!

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宇宙船と日記編43心イカVS赤い水晶人形!

あらすじ:謎の少女に囚われた星庵心は、ようやくゆらに会う機会をつかんだ。
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私の日常 宇宙船と日記編43

 目の前に飛び込んできたのは、赤い水晶人形の右手の紐だった。
「うきゃー!?」
 思わずヘンな奇声を上げて腕で顔をかばう。ぴしりと細い痛みが手の甲に走った。
 何で赤い水晶人形が私を襲うんだ?ここ、どこ?
 後退しつつ、辺りを見渡すと、広い空間が目に入る。視界は高くて、揺れている。
 ここって、クラインさん達がイカ退治してたところだ。
 目の前に同じく後退して間合いを測っている、赤い水晶人形。あんなに小さかったっけ?
 ……いや、違う!私がイカのお腹にいるんだ!

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宇宙船と日記編42約束の夢

あらすじ:絵の中にいたゆらを助けようとした星庵心は、見知らぬ少女に囚われてしまう。
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私の日常 宇宙船と日記編42

 小さな女の子を膝にのせて、大きな窓から地球を眺める。
 座り心地のいい椅子。どこかで見たことがある。
 何だろう。何かしなくちゃいけなかったんだけど……。
 小さな女の子は膝の上で寝息を立てている。
 こんな暗くて大きくて誰もいない場所にいるのは、寂しいだろう。
 女の子の体は、まるで冷えたビロードの感触。
 そこに少しずつ私の体温が伝わっていく。
 安心しきった寝顔を見ていると、気持ちが安らかになる。

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宇宙船と日記編41大気圏外の夢

あらすじ:ルミの描いた巻き物の絵に触れた途端、星庵心は見知らぬ場所にいた。
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私の日常 宇宙船と日記編41

 棲む者も今はほとんどいない、巨大な生体戦艦。
 溢れるほどの輝きがなくても、艦内のどこに自分がいるかは分かる。
 照明を控えるようになってからは、光を拡散せず、暗いままの通路。
 黒絹をたばねたような、神経壁。
 うねり、無数の溝が波走り、所々、情報を受容する玉が埋め込まれてある。
 それだけが、ほのかな明かりを滲ませていた。
 不可視の圧力が、体をなめらかに、目的の場所まで運んでいる。
 無音。
 長い衣の裾が、黒くたなびく。
 この寂しい生体戦艦が終の棲家になるとは思わなかった。 

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宇宙船と日記編40絵の中の…

あらすじ:宇宙船の備品室で出会った少女ルミの、巻き物に描いた動く絵の中には、イカの腹に閉じ込められたゆらがいた。
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私の日常 宇宙船と日記編40

 巻き物に描かれているのは、イカが波に戯れている姿だ。水墨のイカは、紙の中で動いていた。
 イカだけじゃない。イカの周りに描かれた波も同じだった。
 まるでモノクロの映像を見せられているような、奇妙な感覚だ。
 でも巻き物を近づけて見てみると、確実にそれは墨で描かれた線の集まりなのだ。
 そんなルミちゃんの絵の中に、ひとつだけ違うものがある。
 イカのお腹に小さくいるもの。そこだけがカラー映像に見える。
 体を抱えて小さくまるまっている人影は、間違いなくゆらちゃんの姿だった。

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宇宙船と日記編39違う女の子?

あらすじ:人魚の河波と調べた備品室には、見知らぬ女の子が眠っていた。
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私の日常 宇宙船と日記編39

 ジャージを履き終えた河波さんと、二人して顔を見合わせる。
 備品室の奥には、てっきりゆらちゃんがいると思っていたのに、実際そこにいたのは見ず知らずの女の子だった。
 十歳ぐらいだろうか。長い髪を高く結わえ上げて、ポニーテールにしたまま毛布にくるまって眠っている。
「この子知ってる。一本先の帰りの便に乗りかけて、トイレに行くとか言って下りた子だ」
 じゃあ、言葉は通じるんだ。申し訳ないけれど、起きてもらおう。

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宇宙船と日記編38水の中の備品室

あらすじ:廊下に溢れ出した水の中から星庵心を救い出したのは、人魚になった河波だった。

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私の日常 宇宙船と日記編38

 大量の水を吐き出す部屋の入り口を、人魚になった河波さんと二人して、恐る恐る覗き込む。
 部屋の中は明るかった。
 アンケートの部屋もそうだけど、照明はどこから来ているのか分からない。部屋の空気自体が明るさをほのかに含んでいる感じがする。
 河波さんは、抱えた私に頷いてから、中に滑り込む。ミケちゃんは、入り口でお留守番の体勢。見張りなのか、それとも飽きちゃったのか。あっ、あくびしてる……。大丈夫かなあ。

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宇宙船と日記編37ツッコミ人魚

あらすじ:河波と合流した星庵心は、行方不明のゆらを探しに行く。ミケが案内した先は、心がイカに捕まった廊下の一室だった。そこから再び水が流れ出す。

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私の日常 宇宙船と日記編37

 流れに飲み込まれる。口や鼻からどんどん水が入り込んでくる。上下が分からない。
 ぼやけた視界に紺色の塊が揺れている。
 その塊は、水の勢いなど全く関係なく、こちらに近付いてくる。
 紺色のそれが、私の腕をつかんだ。
『ころりん』
 耳に響く、奇妙にはっきりとした声。
 大量の泡が体を包んだ。泡は水を押しのけ、空気の膜をつくる。
 急に体の重さを実感する。足がふらつきつつも床につくのが分かった。
 喉がつかえて、飲み込んだ水を吐き出した。

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宇宙船と日記編36水浸し廊下

あらすじ:宇宙船でのイカ騒ぎは河波達だけの仕業ではないようだった。クラインに気付かれる前に行方不明のゆらを探しに行く心と河波。そんでもってミケちゃん。
 
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私の日常 宇宙船と日記編36

 アンケート部屋から出ると、相変わらず頭上は鳥居の形をした道案内のマーカーが浮かんでいた。明滅を繰り返しているけど、これって実際は本当に光っているんだろうか。
「じゃあ、ミケちゃん。今度はゆらちゃんを探したいんだけど、居場所分かるかな」
 銀豹の姿のミケちゃんは、こっくりと嬉しそうに頷くと『わたくしをつかまえてごらんなさあ~い』と波打際を走るお嬢さんみたいに、はしゃいで走り出した。
 数秒後、その走りは最高速度に到達する。時速100キロ以上。
 ほんの数秒でミケちゃんの姿は点になった。

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宇宙船と日記編35ナゾのイカ?

あらすじ:宇宙船での記憶を消されることに抵抗を覚えた、河波達。起こしたイカ騒ぎは、しかし、本人達の思惑から外れて、暴走を始めていた。

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私の日常 宇宙船と日記編35

 河波さんはアンケート部屋にある、イカの卵を見上げながら言った。
「騒ぎがあって、ころりんとクラインがこの部屋から出てったあとでさ、ゆらべーとスルメを材料にして巨大イカ作ったんだ。その後ぐらいかな、派手な女の人に見つかっちゃってさあ。ゆらべーとは別方向に逃げたから、どこ行ったのか分かんないの」
 んん?つまり、私がクラインさんにアンケート部屋から追い出されたときに起こった騒ぎって、河波さん達のイカ騒ぎとは別ものってこと?
 クラインさんはイカがどうのこうの呟いていたような気がするけど、まあ、日本語じゃない可能性もあるわけだし。

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宇宙船と日記編34イカの真相?

あらすじ:星庵心が宝貝のミケに案内されたのは、アンケートを書いた最初の部屋だった。天井にぶら下がったイカの卵には河波が閉じ込められていた。助けた河波から、クラインから記憶がなくなるという自分とのやり取りを聞いていたことを知る。

 初めてお越し下さった方は、こちらから『宇宙船と日記編1』をお楽しみ下さい。  

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私の日常 宇宙船と日記編34

 星庵心だから、ころりん。いつの間にか、私のあだ名が『ころりん』になっていた。
 ちなみにふみ兄は私を『こっこ』と呼ぶ。理由は不明。もしかしたら、小さい頃、自分で自分のことをそう言ってたのかもしれない。
「帰りの船のとこで、ゆらべーと喋ってたら、盛り上がっちゃってさ」
 ゆらちゃんは、ゆらべーになったのか。河波さんは腰掛けた椅子の側に置いてあった、忘れ物の文庫を気の無い様子で、ぱらぱらめくりながら話を続ける。

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宇宙船と日記編33救出のテーマソング

あらすじ:壺の宝貝ミケちゃんを連れて、星庵心は宇宙船の騒動を起こしたゆらと河波を探しに行く。辿り着いたのはアンケートを書いた始めの部屋だった。 

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私の日常 宇宙船と日記編33

 何故この部屋に戻ってきたんだろう。イカの卵が産み付けられていて、さっき綾井さんと逃げてきたっていうのに。もしかしてイカが食べたいだけなのか?
 ミケちゃんは私を仰いで「さあ、入りたまえ!」と嬉しそうにしっぽを動かしている。
 仕方ない、とりあえず覗いてみるか。
「イカがいたらよろしくね」

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宇宙船と日記編32子猫とお散歩?

あらすじ:赤い水晶人形の攻撃で倒れた巨大イカの体から霧が噴き出し、それに乗じて星庵心は、この騒ぎの張本人らしいゆらや河波を探しに行く。

お越しくださってありがとうございます。今年の7月にブログを始めて、コツコツと書いていたらいつの間にか30回を越えておりました。お立ち寄り下さる皆さんのお陰です~!これからも地道にコツコツ書いていきますので、よろしくお願い致します~。
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私の日常 宇宙船と日記編32

 背後から聞こえた小さな音は、そのまま私の背中に飛び掛ってきた。
 軽い衝撃。肩がちくっとした。
「みゃう」
「み、ミケちゃん……びっくりした」
 子猫のミケちゃんが、私の肩に乗って、どこいくの~?と言わんばかりの幸せそうな顔でのぞき込んでくる。肩に刺さった小さな痛みは、ミケちゃんのらぶり~な爪だった。くい込んでますけど。
「綾井さんのとこにいなくていいの?」
「にゃ」
 可愛らしく鳴くと、肩から軽やかに降りて、ミケちゃんは先立って廊下を歩き始める。私が突っ立ったままでいるのに気付くと、振り返って、「みゃあ」とか仰る。
「もしかして、ゆらちゃん達の場所が分かるの?」

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宇宙船と日記編31高い~!

あらすじ:町田から、イカを大発生させているのが、ゆら達ではないかと指摘されて驚く心。そんな中、対峙していた巨大イカと赤い水晶人形が動き始めた。

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私の日常 宇宙船と日記編31

 巨大イカの触手をかわして、水晶人形が踏み込む。イカの目元まで近付くと、胴(頭の先っちょに見えるとこ)の頂きめがけて、跳躍する。ぱあんと間延びした音が空間に響いた。
 宙返りした水晶人形が、距離を取って着地する。振動がない。右腕から伸びた紐が、床を叩く小さな音だけ。
 イカの動きが止まった。胴の中心から亀裂が入り、左右に分かれる。分かれた胴から霧が噴き出した。水晶人形が、あの赤い紐で切ったんだ。

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宇宙船と日記編30術者の正体

あらすじ:逃げてたどり着いた先には、部下を連れて武装したクラインがいた。印象の変わったクラインに戸惑う星庵心。その場所には巨大イカと対峙する、赤い水晶人形がいた。

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私の日常 宇宙船と日記編30 

 クラインさんは張り詰めた空気をまとったまま、部下の人達を囲んで小声で何やら話し込んでいる。所在無い私の側に、ふわりと影がひとつ、近付いた。町田さんだった。
「大丈夫?」
 落ち着いた静かな声に、何となくほっとして頷く。
「よく綾井を連れてこれたね」
 さすがにもう、床に転がっているのにも飽きたらしく、巨大イカと水晶人形を眺めている綾井さんを横目に、町田さんが感心する。何故か子猫姿のミケちゃんは、嬉しそうにお目々をうるうるさせながら、町田さんに抱えられてうっとりしている。どっかで見たことある、表情。

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宇宙船と日記編29睨み合い

あらすじ:アンケートの部屋で大発生したイカ津波から逃げる心と綾井。たどり着いた場所で遭遇したのは、武装したクラインと、巨大イカと対峙する赤い水晶人形の姿だった。

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私の日常 宇宙船と日記編29

 クラインさんがヘルメットに触れると、どういう仕組みでか、顔の部分だけ覆いがなくなった。
 あれ?
「クラインさん?」
「何です?」
 やっぱりクラインさんだ。でも、肌や目の色が変わっている。はじめに会ったときは、日本人とさして変わりのない姿だったのに、今は、肌は褐色、目は青、髪は金色という変貌ぶり。でも、顔立ちからしたら、こっちの色の方が何となくしっくりくるかも。
「ええと、なんだか感じがイロイロ違うので」
「ああ、あなた方は体色変化しない種でしたね」
 体の色を変えられるのは当たり前、みたいな興味のない口ぶり。

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宇宙船と日記編28巨大イカ?

あらすじ:性格に難ありな超美女綾井と宝貝ミケちゃんに助けられた星庵心は、アンケートを書いた部屋までたどり着く、が、天井には見覚えのない奇妙なシャンデリアがぶら下がっていた。

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私の日常 宇宙船と日記編28

 窓から見えるはずの地球が、見覚えのないシャンデリアに隠されていた。
 そのシャンデリアのひとつが、割れる。ぺちゃん、とやけに水っぽい音が響いた。
 割れて中味が落ちてくる。白い物体。
 私は目眩を覚えた。それは小さなイカだった。
「綾井さーん。どこが安全圏ですかー」
 ぺちゃん。

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宇宙船と日記編27アンケート部屋

あらすじ:宇宙船に大量のイカを発生させているのが、複数の術者の仕業だと知って、驚く心。美女の綾井とむやみに消耗する会話を繰り広げつつ、心たちをお腹に入れたまま、宝貝のミケがある場所までたどり着く。

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私の日常 宇宙船と日記編27

 振り返る気配のない綾井さんの後を、走って追いかけていくと、廊下の先、突き当りの壁に見えていた屏風が、一歩ごとにどんどん大きくなっていく。
 その屏風の側にたどり着いた時には、高さが3メートル近くある、大屏風になっていた。
 廊下自体も、最初にいた場所より、すごく大きく天井が高い。
 走ってきた方を振り返ると、逆に視認しづらいぐらい廊下は遠く、狭く、細く見えた。目が少しちかちかする。
「ほら、出るわよぉ」
 綾井さんはそう言って、私の腕をつかむと、無地の屏風へ押しやった。

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宇宙船と日記編26閑話休題?

あらすじ:超美女で問題発言の多い綾井と子猫や豹の姿になる宝貝のミケに助けられた心は、宇宙船のイカ騒ぎに、術者が関わっていることを知る。

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私の日常 宇宙船と日記編26

 ふと、イカに遭遇する前に見た奇妙な光景を思い出した。
 雪の降る廊下。子供の頃の自分。雪の道。折れた竹の向こうから覗く少女。
 宇宙船を騒動に巻き込んだ人と、その少女が関係があるかは分からないけれど、どうしてだか、あの寂しい目ばかりが思い浮かぶ。
「さあ?」
「さあ、って、追っかけてたんじゃないんですか?」
「だってえ、みんな別々に逃げちゃうんだもん」
 へ?それはつまり、宇宙船にイカを大量発生(方法は不明)させた人が複数いるってこと?

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宇宙船と日記編25宝貝と美女

あらすじ:宇宙船の和室で目が覚めた星庵心。子猫のあとをついてゆくと、謎の美女と出会う。

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私の日常 宇宙船と日記編25

「ええと、じゃあ、アンケートで残った方ですね」
 私が訪ねると、恐ろしいくらい美人の綾井さんは言った。
「それなんだけどねぇ、部屋に忘れ物しちゃってぇ、取りに戻ったら、イカさんと遭遇しちゃったから、ミケちゃんの中に避難したんだけどぉ、出るに出れないわよねえ、これだけの騒ぎになると」
 ミケ……?ミケちゃんの中に避難って、どういう意味?何かの喩えかな。
「あれ、さっきこの豹のこと、ミケちゃんって……」
 

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宇宙船と日記編24豹と美女

あらすじ:宇宙船の和室(?)で目を覚ました星庵心。ロシアンブルーの子猫についていくと、別の部屋で銀の豹に遭遇する。

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私の日常 宇宙船と日記編24

 開けた部屋に、ロシアンブルーの子猫はいなかった。銀の豹だけが太い尾を、苛立たしげに振ってこちらを見ている。
 にじり寄る豹の迫力に押されて、一歩後退る。
 低い唸り声と共に、豹が飛びかかった。
 身を硬くした私の頭上を一気に飛び越える。背後から床を叩く音。
 振り返ると、銀の豹は私の真後ろにいた何かに体当たりしていた。
 それを黒塗りの廊下に、大きな腕で押さえつける。
 液体が撒き散らされた。黒い液体。

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宇宙船と日記編23子猫と迷子

あらすじ:宇宙船の中で突如水流に巻き込まれた星庵心。気が付くと奇妙な和室の布団に寝かされていた。

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私の日常 宇宙船と日記編23

 足に何かが触れた。心地好い柔らかさ。
 見下ろすと、それはロシアンブルーの子猫だった。
「ネコ……?」
 今、どこから入ってきたんだろう。廊下を見てたけど、全然気付かなかった。
 子猫は喉を鳴らしながら、何度か私の足に頭をすりつけると、廊下へと出て行く。
 しっぽをぴんと立てたまま、ちょこちょこ歩き、振り返ると目を細めて、みゃ、と鳴く。

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宇宙船と日記編22謎の和室

あらすじ:宇宙船の部屋から突如溢れた大量の小イカに押し流される心。気付くとそこは襖と障子に囲まれた畳の部屋だった。

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私の日常 宇宙船と日記編22

 水に巻き込まれていたはずなのに、服は濡れていなかった。懐から、形見の懐中時計を取り出す。針は止まっていた。どのくらい寝ていたのか、時間は分からない。
 気持ちのいいお布団に別れを告げ、障子を開ける。
 通路。宇宙船の通路だ。宇宙船に和室がある?それよりも奇妙なのは、通路を流れる水だ。天井まで着くほど大量の水が流れているのに、それが和室の方まで流れ込んでこない。
 見えない壁が目の前にあるみたい。
 それに小イカの大群はどこいったんだろう。水に押し流されたのかな。

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宇宙船と日記編21イカ津波!

あらすじ:赤いロボット(?)を目撃した後、心を助けてくれた町田はどこかへ去ってしまう。一人残される心の前に現れたのは、大量の小イカだった。

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私の日常 宇宙船と日記編21

 もうどこをどう走ったのかは覚えていない。覚えていないが、いつまで経っても通路を進んでいる気にならないのは何故だろう。
 同じような模様の壁と通路だからだろうか。
 それとも私を追いかける小イカの大群との距離が一向に縮みも伸びもしないからか。
 う、宇宙船でイカに追いかけられるのって、私だけかな。
 でもどちらかといえば小イカ達は、追いかけているというより、最初の部屋から吐き出されているだけかもしれない。
 確かめたかったけれど、どういうわけか、脇道にそれる通路が全く見当たらない。逃げてからずっと、一本道だ。

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宇宙船と日記編20赤くて目立つ

あらすじ:宇宙船の通路で謎のイカに捕らわれた心。膨張したイカで割れた窓から危うく放り出されそうになったとき、謎の女に助けられる。

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私の日常 宇宙船と日記編20 

 助けてくれた女の人は、多分三十代前半。きつくはないけれど、凛とした切れ長の目。背は、私より高くて、姿勢がいい。
 そして全身黒づくめ。シャツもスーツもパンツもショートブーツも手袋も首に巻いたスカーフも眼鏡のフレームも全部、黒。肌の見える箇所が顔しかない。
 まるで自分を戒めるために、わざとその色とシャープなシルエットの服で身を包んでいるようにすら見える。
 どこからが自分の髪なのか、さっきまで動いていた黒絹と一緒にまとめて結わえると、まるでクラス委員の雰囲気だ。
「なんというか、クラインさんの日本語が流暢だったから」

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宇宙船と日記編19黒い巣

あらすじ:緊急事態に宇宙船の通路を避難する心。だが、奇妙な雪を見たあと、心は大きなイカの足にとらわれてしまっていた。膨れ上がったイカの足で宇宙船の窓が割れてしまう。

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私の日常 宇宙船と日記編19

 ガラスの割れた窓枠がすぐそばにあった。その枠からゲル状の物質が溢れる。風圧にもめげず、蜂の巣みたいな規則正しい網を張りめぐらせていく。こういう事態に備えて勝手に修復する機能があるんだ。
 立体構造の網がひとつ出来上がるごとに、その隙間にゲルが充填されていく。
 あれ、でもこのままだと私、体がはさまっちゃうのでは。
 そう考えたのも一瞬だった。また軽い衝撃があった。宇宙船の中へ戻っていく。私を包む何かが、引っぱられていく。

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宇宙船と日記編18イカ!?

あらすじ:宇宙船の緊急事態で非難していた心は、船の中で雪が降っているのに気付く。その中で見たのは、幼い自分の姿と、見知らぬ少女の姿だった。

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私の日常 宇宙船と日記編18

 揺れている。揺さぶられているのか。揺れる視界の中、自分の体が白いものに埋まっているのが分かる。これ、何だろう。白くて、冷たくて、ぬるぬるしてて、磯の香りがほんのりと……。
「…………イカの足?」
 正確には手の方かもしれないけど、それにしたって、これはどうも変だ。
 私の体を持ち上げるほど大きなイカの足が、通路の部屋のひとつから、はみ出してきてる。
 ど、どうしてこんなところにイカが?
 食べたから?私がスルメイカを食べたから、そのフクシューに?
 粗末にしてないし、おいしくありがたく食べたから、バチはあたらない……と思うのは人間側の勝手な言い分かな、やっぱり。

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宇宙船と日記編17星と雪

あらすじ:宇宙船の緊急事態に一時避難する心。クラインに与えられた道しるべを頼りに通路を歩き出す。

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私の日常 宇宙船と日記編17

 マーカーが示す道のりは、途中まではゆらちゃんと一緒に歩いていた方向と重なっているので、そのまま赤い光の流れにまかせて歩いていく。
 あ、急がなきゃいけないのか。駆け足、駆け足。
 通路はさっき見たときより、明らかに扉や分岐が増えている。
 それに、壁にはなかったはずの模様や装飾が現れて、すごくお洒落になっている。
 角ばっていたはずの内装は跡形もなく、アンケートを書いた部屋に似た、丸みと曲線が目立つ造りになっていた。

 

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宇宙船と日記編16緊急事態?

あらすじ:地球調査の為に、宇宙船での記憶は消されてしまうと知った心。そのとき、緊急事態を告げる警告が発せられた。

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私の日常 宇宙船と日記編16

 クラインさんは赤くなった部屋の中で、どこかあらぬ方向を見ながら、聞きなれない言葉で何かを言い続けている。誰と喋ってるの?
 目を瞬かせて見ていた私を不意に振り返って、クラインさんは言った。
「少々立て込んでおりますので、一時皆さんの所まで、お戻りいただけますか」
「えっ、場所分かりません」
 通路の途中で折り返してきたから、どこにみんなが行ってるのか、私にはさっぱりだ。
「それではマーカーに従ってください」 
 クラインさんは私の服の袖にカードを貼り付けた。触ると、水分を含んだ片栗粉みたいな感触。強く押すと固まって、ほっておくと服のしわとまぎれてしまう。

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宇宙船と日記編15 時間のかけら

あらすじ:地球調査の為、心に中継点となるアンテナを所持してほしいと迫るクライン。同意しても、調査の規定で宇宙船にいた間の記憶は忘れてしまうという。

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私の日常 宇宙船と日記編15

「一度忘れた記憶が戻ることはありません」
 深い水底に沈み込むような、静かな静かな声。
「……そう……」 
「……大丈夫ですか」
 クラインさんのあたたかな手が、肩に触れている。
 自分で落ち込むとこまで落ち込ませといて、そんなこと聞かないでほしい。

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宇宙船と日記編14アンテナとアンケート

あらすじ:宇宙人のクラインさんから頼まれたアンケートを無事書き上げたものの、帰る途中忘れ物に気付く星庵心。部屋に戻ると、クラインは心にある頼みごとをしてきた。

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私の日常 宇宙船と日記編14

 アンテナを、持つ?
 恐る恐る見上げると、どう受け取ったのか、クラインさんが深々と頷きを返してくる。
 やっぱり、あのアンテナ?しかもでっかい?
「……いったい、その顔は何を想像しているんです?」
 顔が引きつっていたのか、クラインさんが不思議そうに尋ねる。
「持つなら、まだ可愛げのあるお皿タイプの方が……」
「一目見て分かるような形状ではありませんよ」
「ほんと?でも……むやみやたらと大きかったら、同じですよね」

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宇宙船と日記編13マヨネーズだめ?

あらすじ:アンケートを書き終えて地球に帰ろうとしていた星庵心は、忘れ物の新聞を取りに部屋へ戻ったが、そこでクラインがいつの間にか心の新聞を読んでいた。果たして返してもらえるのか?

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私の日常 宇宙船と日記編13

「……おや」
 目を瞬かせると、クラインさんはすぐに丁寧な笑顔を浮かべて姿勢を整える。部屋の入り口にいる私が動かないのを見て、ゆったりと近付いてくる。
「如何なさいましたか」
「あの、忘れ物を」
「ああ、それは残念」
 いたずらっぽい眼差しで、クラインさんはうやうやしく、新聞を畳み始めた。

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宇宙船と日記編12忘れ物

あらすじ:お姉さん方をきれいにあしらう宇宙人クラインさんを横目でみつつ、星庵心はアンケートを書き終える……が、考え事が多すぎてもたもたしている内に周りの人はもう帰りはじめていた。

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私の日常 宇宙船と日記編12

 出口の外は長い通路。ゆるやかにカーブを描いてずっと先まで続いている。
 前の方から、姿は見えないけれど、先に部屋を出た人たちの楽しそうな話し声が響いてくる。
「結局最後になっちゃってごめんね」
 今、何時ぐらいだろう。通路の片側は窓になっていて、外が見えるけど、星と宇宙だけではさすがに時間までは分からない。
 ケータイは家に置きっぱなしなので、服のポケットに入れてある時計を取り出した。
「懐中時計ですか」
 ゆらちゃんが珍しそうに覗き込む。髪がさらさらと零れる、その仕草がまた可愛い。こんな妹がほしい!若干ユカイな兄もいるけど、こんな妹がいたら良かったなあ。

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宇宙船と日記編11アンケート模様

あらすじ:睡魔が訪れるほどぼかした説明をイケメン宇宙人クラインから受けつつ、地球調査の為という、アンケートを書く星庵心たち。だが渡されたアンケートの内容は拍子抜けするほど簡単だった。

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私の日常 宇宙船と日記編11

 20分ほど過ぎると、ひとり、ふたりと、アンケートを書き終えた人たちが席を立っていく。
「おもしろかったですよお」とか「また誘ってくださいね~」とか言いながら、お姉さん達がクラインさんを取り囲んで、きゃあきゃあ楽しそうに騒いでいる。
 あれもいわゆる異文化交流かな……。
「私どももあなたにお会いできて光栄です。今は時間がありませんが、また次回、ゆっくりお話を伺いたく存じます」
 クラインさんは笑顔で対応しつつも、そのお姉さん達から名刺やメルアドを自主的に貰って会話を切り上げ、その場に残ろうとする人たちを部屋から送り出していく。

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宇宙船と日記編10アンケート始め

あらすじ:イケメン宇宙人からアンケートのお願いをされた星庵心たち。地球調査の一環であるらしいのだが、イケメン宇宙人の説明がやたらと睡魔を誘う。わざとか?わざとなのか?

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私の日常 宇宙船と日記編10

 眠い目をこすり、辺りを見回せば、クラインさんの心地好い口調と、肝心な所をぼかした微妙な言い回しに、大半の人がウトウトしかけている。
 河波さんは私の肩にもたれて完璧に撃沈している。
 ゆらちゃんはといえば……つ、強い。新聞読んでる……。
「よーするにぃ」
 その間延びした声が聞こえた途端、睡魔にとりつかれそうになっていた意識が、いきなりクリアになった。
「しめきりを守りつつぅ、ネタを探しにきたのねぇ」
 声の主は私より二列前ぐらいの席にいた。顔は見えないが、まっすぐな背筋に波打つブルネットの髪が腰までのびている。

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宇宙船と日記編9睡魔との遭遇

あらすじ:謎のイケメンに頼まれて、アンケートを書くことになった星庵心たち。だが、報酬がないと聞いて、残った女性達はあきれて帰っていく。果たしてアンケートを書く人は残るのか?

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私の日常 宇宙船と日記編9

『よろしいですか?』 
 さすがにもう立ち上がる人はいなかった。
『ご協力ありがとうございます』
 丁寧にイケメンさんが頭を下げる。
『薄々気付いていらっしゃるかとは思いますが、私どもは皆さん方の言葉で、いわゆる宇宙人、地球外生命と呼ばれる存在です』
「どちらに住んでらっしゃるんですかあ?」
 前列にいたお姉さんが、妙に可愛い声で質問する。あまり宇宙人て単語は、彼女にとって重要じゃないみたいだ。
『定住はしておりませんので、あえて申すなら、この船が我が家ということになります』
 会話ポイントをずらしつつ、にこやかに男の人は答えた。住んでた星を教えたくないのかな。 

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宇宙船と日記編8渋イケメン?

あらすじ:見知らぬ場所でアンケートを書くことにした星庵心。知り合った虹望ゆらと、次に出会ったのは、河波魚子さん。だが、名前の読みが分からない!果たして二匹目のスルメはゲットできるのか!?

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私の日常 宇宙船と日記編8

「わーい、スルメ下さい。ななこさん~」
「早っ!」
 驚きを隠せない様子で、河波魚子嬢はゆらちゃんを凝視した。
「もしかして、名札にフリガナふってた?」 
 ふってない、ふってない。
「なこ、とか、うお子って、絶対言われると思ってたのに~。あー、スルメがどんどん減っていく~」
 まだ持ってるんだ……。
 スルメ大好きな河波さんに自己紹介していると、前の方で歓声が上がった。 

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宇宙船と日記編7十腕目のおやつ

あらすじ:見知らぬ場所(何だか宇宙っぽいぞ)にいつの間にかつれて来られた星庵心は、謎の人物の提案するアンケートを書こうと、女子高生の虹望ゆらとその場に留まる。そこで次に会ったのは?

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私の日常 宇宙船と日記編7

 膝からジャージののぞく女子中学生さんは、私に顔を近づけて言った。
「それにしても、お菓子とか出ないのせこくない?ひもじいよね~」
 すごくよく通る声なので、内緒話になっていない。周りの人たちもくすくす笑って同意している。
「しょ~がないから、とっておき~」
 彼女はおもむろに、学校指定のショルダーバッグに手を突っ込むと、私とゆらちゃんにぽいぽいと手渡していく。
 あわててつかまえたそれは……スルメだった。

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宇宙船と日記編6そして誰も…

あらすじ:気が付くと星庵 心は、宇宙船の一室にいた。そこで正体不明の男がある提案をする。「アンケートを書いてください」と。でも、お友達になった女子高生は聞いてたんだか、聞いてなかったんだか、さっぱりです……。

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私の日常 宇宙船と日記編6

「ゆ、ゆらちゃん、ゆらちゃん?」
「なんですかあ?」
 嬉しそうな表情で私を見上げる虹望ゆらちゃん。
 新聞を読んで、こんな幸せそうな顔をする人、初めて見た。
「前に行く?」
 尋ねると、ゆらちゃんは頷いて立ち上がる。あ、聞いてたんだ。
「あれ?」
 呟くと、ゆらちゃんは落ち着きなく辺りを見まわしたかと思うと鋭くのたまった。
「アガサ・クリスティ……!」
「まだいるから、50人ぐらい」
「他の人、帰っちゃったんですか?」
 本気で聞いてなかったのね。    

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宇宙船と日記編5はじまりの説明

あらすじ:見知らぬ場所(なんとなく宇宙船ではないかなと)につれてこられた星庵心は、そこで美少女虹望ゆらと出会う。でも、何でここに自分がいるかは、分からなかったりする。

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私の日常 宇宙船と日記編5

 虹望ゆら、と名乗った彼女は、小首を傾げて私を見た。あ、今度はこっちの名前か。
「星庵心。星の庵で、せいあん。名前のこころも漢字ね」
 自己紹介を終えたのを見計らったように、その声が届いた。
『大変お待たせしました』

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宇宙船と日記編4ゆらナノ?

あらすじ:女子大生の星庵心(せいあん こころ)は気が付くと見知らぬ場所にいた。天井の窓から見えるのは、何故か地球の姿。マイペースに新聞を読んでいた彼女の前で、とんでもない美少女がこっそり新聞をのぞいていた。

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私の日常 宇宙船と日記編4

「いえいえ、単にわたしの興味範囲です」
 何の話だっけ。……あ、そうそう、新聞にのってるナノマシンの記事だ。
 またしても目の前の彼女にみとれてた。大丈夫か、私。
 ナノマシン。
 ナノは大体、髪の毛の太さから、DNAの二重螺旋の経の長さぐらいまでが、その範囲。
 十億分の一という、やたらと小さな単位でものを扱うのが、ナノテクノロジーだ。
 大きなものを削って、小さなものを造っていくより、最初から小さなもので小さいものを造るほうがええやん、て発想らしい。                   

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宇宙船と日記編3美少女と新聞

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私の日常 宇宙船と日記編3

 新聞を閉じると、何かがさらさらと零れていく。
 色素の薄い髪。
 私の前の席。後ろ向きに座って、椅子の背に両手をちょこんと添えている女の子。
 その少女の肩口から、長い髪が流れていく。部屋の照明で、淡い緑の艶を帯びていた。
 その子は首をかなりつらそうな角度に傾げて、一心不乱に、私が持っていた新聞の一面を読み耽っていた。
「ナノマシンの記事……」
 呟いたその子と目が合った。大きな瞳。
 雨上がりの竹みたいに輝いている。
 ふっ、と惹き込まれる。きれいな少女。
 まるで童話に出てくる妖精を、最高級の宝石で創り上げたみたいだった。
 周りの空気が全然違う。細い手足。ほんのり赤みのさした、白い肌。水のように流れる細い髪。歌うような囁き。
 あまりにきれいで、ヒトを見ている気がしない。
 でも、何だかまだ首がものすごく辛そうな格好のままなような……。                                   

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宇宙船と日記編2お喋りと新聞

あらすじ:女子大生の星庵心は、気が付くと窓から地球の見える、見知らぬ場所にいた。  

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私の日常 宇宙船と日記編2

 ほったらかしにされているせいで、室内は集められた500名の女性達によって、全国おしゃべり大会が展開されている。
 まるでお題が出されているように、あちこちから似たような内容が聞こえた。
 コイバナから始まって、休日にゴロゴロするだけの旦那さんの愚痴。
 仕事をしない上司と仕事が出来ない新人へのストレス話。
 ネコ好きだけに通じるネコ話。
 好きな俳優や深夜の海外ドラマの感想に、家庭料理のレシピ公開、地元のおいしい隠れ料理店の場所やら、名前が出そうで出てこないタレント話やら、嫁姑骨肉の争いなどなど。
 見ず知らず同士で却って話しやすいのか、おしゃべりはどこまでも加速してゆく。
 新聞を読んでいるのは、私だけだろうか。
 目が覚めたのが、周りの人より若干遅かったらしく、話の輪から取り残されてしまっていた。
 それにしても、何でこんなところにいるんだろう。

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宇宙船と日記編1大気圏外?

 ようこそお越しくださいました。ありがとうございます。現在『宇宙船と日記編』の続編『異世界剣士とさくら編』も書いていますので、よろしければこちらからご覧ください。
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私の日常 宇宙船と日記編 1

 ここにある。
 いつか見たいと思っていたもの。
 地球。
 私のいる世界。
 大気圏外からの姿。
「ひまねー」
「ですよねえ、いつまでここにいればいいんでしょう」
 私のすぐそばの座席にいた主婦とOLが、とりとめない会話で時間を潰している。
 座席で目覚めて30分。
 ケータイも使えず、座っているだけのこの状況は確かに暇だ。
 みんな最初は、天井一面から見える青い青い地球の姿に、言葉もなく魅せられていたけれど。

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