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夢見る竜とGW編4悪酔いの光景

あらすじ:クールなビジネス少年の車で、ナゾのパッケージモニター?をさせられつつ、何だか見覚えのある場所へと連れて行かれそうな心だが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編4

 少年が誰かにかけていたケータイを切った直後、運転手さんが急ハンドルを切った。直進車線を走っていた車が、ドリフトしながら交差点を左折してゆく。
 後方でハンドルを切り損ねた車が数台、信号の切り替わって進入してきた他の車に囲まれて、避難のクラクション攻撃を受けている。
 もしかしてあれ、さっきショッピングモールにいた誘拐未遂犯の仲間だろうか。
 うう、本格的に気持ちが悪くなってきた……。

 高度な運転技術をお持ちの運転手さんは、その後もやたらと入り組んだ走行を続け、とある閑静な住宅地にやってきた。大きな壁にぽかりと開いた入り口へと滑り込むと、車はなだらかなコンクリートの斜面を下っていき、薄暗い空間で停止する。
「いつまで座っている」
 あれだけ振り回されたのに、少年はスーツに乱れたシワひとつなく、先に車を降りていく。
 ああ、せっかく降りれたのに足元がぐるぐる動いてる。中腰のヘンな体勢で悪酔いを堪えていると、照明が一斉に灯った。煌々と輝くライトの下で、ずらりと並んだ高級車。やっぱりここ、綾井さんの家だ。運転手さんがすごく幸せそうにフェアレディZ~とかランボルギーニ・レヴェントン~とかブガッティ・ヴェイロン~とか、多分車のお名前を口ずさみながら、お花畑のように駐車場をスキップしている……。車好きなんだなあ……。
 先にたって歩く少年の背中がどんどん遠ざかっていく。時は金なりを体現したビジネスマンの歩き方。階段を上がって廊下を進んだ先のリビングに辿り着くと、目の前でクールな少年が、突然化鳥のような叫び声を上げる飛司少年のとび蹴りを食らってふっとんでいた。
「……何をする」
 怒るかと思いきや、蹴り飛ばされてもクールな少年は呆れているだけだった。逆に飛司少年は分かりやすいぐらいに手足をバタつかせて怒りまくっている。
「何するじゃねーっ!お前来るのがおせーぞっ!しんぱいさせんなっ」
 クール少年は私に振り返り、一言。
「一般家庭では心配の度合いを飛び蹴りで表現するのか」
「しない、しない」
 結構本気で聞いてくるので手をぱたぱた振って否定すると、何故か飛司少年が驚いた。
「えっ、マジ!?おれんち、いっつも蹴りとか拳だぞ!」
 いつもってことは、そこまでされても君は全然めげないタフな子なんだね……。
「で、さっき言ってた話は本当なんだろうな」
 服の埃を払うとクールな少年は、リビングのソファに腰掛ける。大画面テレビでヌンチャクを振り回すブルース・リーに溜息をついて電源を消すと、廊下から乱れた足音が聞こえて綾井さんが飛び込んできた。それだけで周りの空気が金箔の華を撒き散らしたみたいに陶然となる。
「こ、こころちゃあん!大変なのよお!」
 綾井さんが大変っていうと、私が大変な目に遭いそうな気がするのはどうしてだろう。
「なんですかー」
「とにかく来てえ!」
 いやがる私を全く気にせずに、綾井さんはなめらかな腕でがっちり摑み、ずるずると引きずっていく。果たして想像通り、大変な光景がそこには拡がっていた。
 高級食材が並べられた特注アイランドキッチンのまな板に、何かの残骸が、こう、口にするのもおぞましい状態で散らばっている。
「あ、綾井さん、これ何ですか……?」
「きゃべつ」
「……………………きゃべつ?」
 こ、これが!?む、むごい!むごたらしい!あの可憐な緑のまるまるとした姿が、こんな内部崩壊を起こした恐ろしい状態になるなんて……!
「一体何を作ろうと……」
「ロールキャベツ?」
 すでにロールの定義をはるかに超越した状態なんですが……。
「だからこころちゃんが来てくれてよかったわあ」
「作れと」
 速攻で綾井さんは頷いた。お薬は作れるのに、何で料理は作れないんだ。医食同源の国の人じゃないのか。
「いいですよ~、もう。なんかかわいそうになってきたから」
「ああん、こころちゃんたら、そんなほろりとさせること言わないでえ」
「食材が」
「……」
「それにしても、あの子達、何しに綾井さんの家に?」
 きゃべつの残骸をまとめながら、何気なく聞いてみると、返ってきたのは一言。
「竜探し」
 何でだろう。頭の中でまた大変な目に遭うランプが激しく点灯してるんですが。

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