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夢見る竜とGW編3凍えるモニター

あらすじ:ショッピングモールで出会った見知らぬ少年の車に乗る羽目になった星庵心だが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編3

 石鏡葉守。いじかはもり。どこかで聞いたような覚えがある。どこでだったかな。
 少年は興味のなさそうな手つきで履歴書の入ったクリアファイルを差し出した。ポケットから多機能が売りの最新ケータイを取り出している。スーツの袖からちらりと特注らしい高価そうな時計がのぞいた。何だかオフィスで、忙しそうな上司に自信満々の企画書をつき返されてる気分。
「それで、つまり何が言いたいんだ」
 電話の相手は近しい間柄なんだろうか。言葉は身も蓋もないのに、少年の声が少しだけ感情を帯びて、私に対するより熱を感じる。 
「シートベルト」
「あ、はい」

 凍える指示に思わず敬語で返事。シートベルトをつけると、間髪入れずに運転手さんがギアチェンジして車の速度がいっきに上がった。あー……どこに行くんだろう……。ふみ兄にメールでも打っておこうかな。用事が出来たから帰り遅れます。夕食当番、今日代わって下され、と。
「関係無い事にどうして逐一首を突っ込むんだ。…自分で調べろ。…誰が言ったんだ。…信用出来るのか。…まあ、いい。話は聞いてやる。切るぞ。僕は忙しいんだ」
 メールの返事を待つ間、少年の大人顔負けにドスのきいたやり取りが聞こえてくるのが何だかいやで、窓の外を遠い目で眺める。ああ、日が暮れるなあ……。家のある山が遠ざかる……。大学直通のお洒落ケーブルが、最後の陽の筋を受けて、キラキラ反射している。
 すっごい、帰りた~い……。
 でも、ここで降りたらキケンな人たちに連れて行かれるし……。
「藤の間だ」
 軽快にギアチェンジの音が響いて、車は一般道からバイパスへ上がっていく。
「ど、どこって?」
 藤の間って、料亭か?
「用事が済んだら今日中に家まで帰れる距離です」
 つまらなさそうに言いながら、少年は座席のボックスからパソコンを取り出すと、ファイルを開いて私の方へと向けてみせた。
「気に入ったデザインを言ってくれ」
「はい?」
「モニターだ。移動時間を無駄にしたくない」
 背広おじさん達に言ってたあれを本気でするつもりなのか……。画面にあるのは、色とりどりの何種類もの可愛らしいパッケージ。
「これ、お菓子?チョコ?」
「……僕が選べと言ったのは」
「で、デザインですっ」
 車線変更と少年の冷ややか視線に体がくらくらする。選べと言っても、次々見せられたパッケージをこっちがいいとか、あれがいいとか、これ花柄多すぎるねとか、まるい方がいいとか、緑がいいとか、パステルが可愛いとか、これなら買いたいなあとか、どっかの商品と似てるねえとか、うわっ、これはちょっと、とか好き勝手な感想を見たまま言うだけなんだけど、それについては少年は何も言わずに書類になにやら書き込むだけだった。
 それにしても、急いでいるのか何度も車線変更を繰り返している。ちょっと三半規管が弱いからつらい。パソコンまで見てるし。どこに行くかは知らないけど、目的地に着いたら、お手洗い借りなきゃいけないかも……。
 車酔いとたたかってる間に、車はバイパスを下りて、一般道へ戻っていた。辺りはすっかり暗くなっている。パソコンを閉じると少年は再びケータイを取り出した。今度は自分から掛けている。あ、メールの返事を確認するの忘れてた。
『了解!こっこ隊員の帰還をキタキタ踊って待つ!腰蓑ないのがすごく残念であります!!』
 今日はどういうわけか、このいつもながらのふみ兄のヘンなテンションのメールにすごくほっとする。一行後に、追加文があった。 
『さくら隊員からメッセージ有り!「問題があれば即参る」!!以上!』 
 いや!参らなくていいです!この状況見たら、多分斬っちゃうから!
 座ってるのに立ちくらみを覚える私の横で、少年は思わぬことを言った。
「そろそろ着くぞ。また誘拐犯付きだ。綾井に地下駐車場の扉を開けておくように言っておけ」
 ……いま、綾井って言った?地下駐車場とかも言ったよね。
 それって、あの大迷惑仙女の綾井さんのこと……?

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