夢見る竜とGW編34闇と乱反射

あらすじ:葉守少年に招待され理由も分からぬまま石鏡邸で時間を過ごす星庵心だが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編34

 黄昏の中で、葉守少年は私に話し続ける。
 話題はとめどなく、数珠つなぎになってコロコロと目の前を転がっていく。
 映画のことから、そこに出てきたチェスのことから、将棋のことから、取引先社長との息詰まる対戦のことから、日本庭園のことから、その剪定方法のことから、自分の庭に咲くバラの種類のことから、ナポレオンの奥さんのことから、西條八十の『かなりや』のことから、野鳥の好む果樹のことから、野生動物のことから、歌舞伎の獅子のことから、私の髪型のことになり(何でだ)、どこで控えていたのかプロのスタイリストさんがやってきて、急遽ニセ髪を盛られるまで話は尽きることがなかった。
 やたらと渋いシュミなのに、話し上手なせいか、それとも私の興味に引っかかる話題構成のためか、聞き飽きることがない。
 葉守少年はそんな私の様子に、どこか安堵している。
 私が、彼自身が一番話したい話題がどこかにあるのか、待っていることに、静かに安心している。
 でも、もう陽が沈む。
 木々の向こうにあたたかな朱の一筋が刷かれて、すぐ闇へ溶けていく。
 薄暗い部屋で葉守少年は立ち上がると、私に手をさしのべた。
 その手をとって、立ち上がろうとすると、存外強い力で引かれる。
 ぽすんと体にぶつかった小さな衝撃は、そのまま動きもせずにそばにいる。
 引いた私の手を握ったまま、うなだれて葉守少年が体をくっつけていた。
「葉守君……?」
「…………」
 くっついたところだけがあたたかい。
「……君とこうしたかったわけじゃないんだ」
 ドレスの胸の飾りにかかる少年の髪がさらさら零れて離れていく。
「でも、意外に楽しかったよ」
 握っていた手が振りほどかれると、すぐそばにいたはずの少年の姿はそこになかった。
 あれ……?どこ……?
 あわてて見回すと、部屋の一方から細く光が零れている。
 手探りで進んで辿り着くと、不意に光と音が溢れた。
 曲線を描く格子の手摺りが、モザイク模様の大理石の階段に添って、階下のホールまで続いている。
 天井の大きなシャンデリアが煌いて、ホールは聖なるもので満ちた絵画のように、緻密に人々の輪郭を浮かび上がらせていく。
 光が反射する。まとった宝石が反射する。グラスが反射する。光が弾けて撒き散らかされていく。弦楽器と笑い声が水に浮かんだ油のように流されてくる。
 目と耳が痛い。
 くらむ光景に目をしばたかせて、手摺りから人波を見下ろすと、手に伝ってコンコンと硬い響きが届く。
 ちょうど階下の手摺りの端にもたれていた人が、手にした携帯を無造作に当てている音だった。
 上品なドレスとアクセサリ。
 私がつけているのと同じもの。

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夢見る竜とGW編33暮れる庭園

あらすじ:いつの間にやら帰宅していた星庵心にドレスやアクセサリが次々と送られきたかと思えば葉守少年に謎の招待をされる羽目になり……。
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私の日常 夢見る竜とGW編33

 車はやがて煉瓦造りの塀に囲まれた目的地に辿り着いた。
 大学とどことなく雰囲気が似ているが、こちらの方が古びて蔦が絡みつき、乗り越えられないほどの高い塀の上には防犯用の尖った柵が取り付けられている。
 自動開閉する鉄扉をくぐると、植えられたのか、元々あったのか、大きな木々が森をつくっていた。
 普段、誰も使っていなさそうな車道を通り、森を抜けると、煉瓦塀より更にいかめしい石造りの建物が現れた。
 しゃ、シャトー……?ファンタジー映画に出てきそうなお城みたいなんですけど……。

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夢見る竜とGW編32ドレスな展開

あらすじ:神泉で澪海少年は正気に戻ったが、葉守少年の様子がおかしいことに気付いた星庵心は泉へと走り出すが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編32

 気が付くと見慣れた天井が目に入った。
 自分の部屋。
 あれ……?いつの間に家に帰ってたっけ?
 キッチンに向かうとふみ兄が晩御飯の用意をしている。
「ふみ兄、私、いつ帰ってきたっけ?」

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夢見る竜とGW編31神泉で

あらすじ:聖域の狛犬の前に辿り着くと、剣の壱村のライターに過剰反応をおこした澪海少年が突如黒い炎に包まれてしまうが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編31

 澪海少年の悲鳴とともに、周囲の苔が黒く焼け焦げて縁取られる。逆に縁取りの内側は急激に冷えて霜柱が生えていた。
「手間のかかる!」
 影珠さんが筆を取り出して真一文字に払うと、黒い炎が崩れて筆へと吸いとられる。
 それでも残った炎の断片が、すぐに澪海少年の体を包み込んだ。
「何やってんだよ!早くあの火けしてくれよ!」
 飛司少年が怒鳴る。

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夢見る竜とGW編30黒い火

あらすじ:葉守少年たちの符の転移を留めるために竜の卵を聖域まで運ぶ星庵心たちだったが……。
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私の日常 夢見る竜とGW編30

 生い茂る下生えの道を歩いていると、足元の感触が変わった。
 踏むのもためらわれる鮮やかな苔が、土と木々の幹をびっしりと覆い尽くしている。
 肌を引きしめる、静かで張りつめた空気。
 弾力のある苔が音を吸い込んでいる。
 葉の隙間から、ぽつぽつと揺れる細い光が苔の翠に反射して、やけに眩しい。
 とても静かだ。
 先程まで騒いでいた飛司少年たちも、口をぽかりと開けたまま、緑の絨緞と天蓋を仰いでいる。
「見たことねー精霊がすげーいる」

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